インタビュー & 特集
「役者が体をはって頑張っている、そこの生き様や演じ方を、見ていただけたら」 リュウケン役 川口竜也 インタビュー
★★開幕直前ミニ連載 part.2★★
ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』が12月8日に初日を迎える。ケンシロウ、ラオウ、トキを育てた北斗神拳の伝承者・リュウケンを演じる川口竜也に舞台への思いを語ってもらった。(文:臼井祥子)
INTERVIEW & SPECIAL 2021 12/5 UPDATE
●『北斗の拳』がミュージカルになると聞いて、どう感じられましたか?
ホリプロさんは以前から日本のオリジナルミュージカルを世に出していらっしゃいますが、その姿勢が好きでしたので、『北斗の拳』もそうであることにまず心惹かれました。しかも僕は『北斗の拳』世代ですからね。連載当時の『週刊少年ジャンプ』を読んでいましたし、そういう意味では楽しみでありました。でもあの必殺技などを、どうやるんだろうなあと(笑)。
オーディションを受けて、リュウケン役に決まった時には本当にうれしかったです。自分の年齢でできる役として考えうる最大のものをやらせていただけることになったなと思いました。
●リュウケンはケンシロウたちの師匠ですが、川口さんご自身も座組の中で、師匠的な存在なのではないでしょうか?
僕は、そういうつもりはないんですけど、残念ながら最年長ですね(笑)。でも基本的には人に教えるということはしていないです。「不言実行」でいたい。僕は市村正親さんを見習ってそうしたいと思っているんですが、あの方は朝、劇場に来て、きちんとアップをして、誰に何を言うでもなく汗をかいて舞台に上がっていらっしゃる。その姿勢を17、8年も前に見て、僕もこうありたいと思ったんです。だから自分が老体に鞭を打って頑張っている姿を見て、若い俳優たちに何か思うようなところがあればいいなと思っているんですが、それでも時々は何かを口走ったりしますね(笑)。
みんなそれぞれに才能のある、タイプの違う役者さんたちです。しいて気になっている役者を挙げるなら、バット役の(渡邉)蒼くん。まだ高校生ですけど、いい感性といい声と動ける体を持っています。将来がとても楽しみです。
稽古は新作ですので、いろいろ試行錯誤をしながら作っています。合間合間に石丸(さち子/演出)さんが熱い言葉をかけてくれて、それにみんなが呼応して頑張っているところです。リュウケンは、フライングはないですが、若い頃のリュウケンが出てきて、ラオウに稽古をつける場面があったりして、楽しくやっています。
●『北斗の拳』は40年近く前に連載が始まった作品ですが、今、ミュージカルにする意味はどんなところにあるのでしょうか。
「普遍性がある作品は現代に生き残る」ということだと思います。『北斗の拳』の中で、現代の皆さんに見ていただくべきテーマがあるとするなら、最終戦争が起きて文明社会が失われた世界で、人々が、真実の人間の情や愛、人とのつながりなどを求めていくこと。そういうところは、特に今、パンデミックが起きた世界で生きている現代の我々にも通じるものがあるのではないかと思っています。
原作は昔の作品だけれど、基本的に人間は変わらないんじゃないでしょうか。あとは作品の中でそれをどうリアルに演じていくのか、ですよね。「役をどこまで漫画ふうにカリカチュアして演じたらいいのか」ということを、稽古の初めに石丸さんと話しました。最終的に落ち着いたのは、人間がリアルに存在しないと、お客様には伝わらないだろう、と。それこそ漫画の真似事で終わってしまう。生身の人間がリアルに演じることで初めて、お客様の心に訴えられるものがあるんだと思って、稽古に臨んでいます。
●3人のお弟子さんを演じられる5人の俳優さんたちについて魅力に感じていることは?
福井(晶一・ラオウ役)に関しては、ずっと一緒にやっていますし、実力は十分にわかっているので、どんなラオウが出来上がるのか楽しみです。宮尾(俊太郎・ラオウ役)さんはご一緒するのは初めてなんですが、バレエ出身ということで体が効くし大きいので、迫力があるなと思っています。(小野田)龍之介(トキ役)は、歌の実力とお芝居に関するセンスは間違いないです。繊細なトキを演じてくれるんだろうなと思います。彼はいつも稽古場でほかの人の見ていないところを見るようにしている気がします。加藤(和樹・トキ役)くんも初めて共演しますが、なにせ美男子ですし、いちいち様がカッコいい。殺陣をやっていてもカッコいいなと思っています。そして大貫(勇輔・ケンシロウ役)くんには脱帽しています。アクション、殺陣、身体能力にびっくりします。ここまでできる人っているんだなと。本当にそこはみなさん、楽しみにしていただいていいです。面白いもので、稽古場でだんだんケンシロウになってきているなと思います。
しっかりとした演劇として残る作品にするべく、カンパニー一同頑張っています。アクションも、フランク・ワイルドホーンの楽曲も見どころではありますが、人間たちが生きている、役者の体をはって頑張っている、そこの生き様や演じ方を、見ていただけたらと思います。
[公演情報]
ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』
<東京>
2021年12月8日(水)~12月29日(水)
日生劇場
<大阪>
2022年1月8日(土)・9日(日)
梅田芸術劇場メインホール
<愛知>
2022年1月15日(土)・16日(日)
愛知県芸術劇場 大ホール
原作:漫画「北斗の拳」(原作:武論尊 漫画:原 哲夫)
音楽:フランク・ワイルドホーン
演出:石丸さち子
脚本・作詞:高橋亜子
振付:辻󠄀本知彦 顔安(ヤン・アン)
出演:大貫勇輔 平原綾香・May’n(Wキャスト) 加藤和樹・小野田龍之介(Wキャスト) 植原卓也・上田堪大(Wキャスト) 川口竜也 白羽ゆり 松原凜子 伊礼彼方・上原理生(交互で役替わり) 福井晶一・宮尾俊太郎(Wキャスト) ほか
https://horipro-stage.jp/stage/musical_fons2021