インタビュー & 特集

宝塚月組 月城かなと・海乃美月の新トップコンビによる博多座公演は、清々しくエネルギッシュ!

宝塚歌劇団月組の月城かなと・海乃美月の新トップコンビプレお披露目公演が、10月11日に福岡・博多座で開幕した。お芝居は31年ぶりの再演となる日本物の名作『川霧の橋』、ショーは博多座バージョンとして生まれ変わった『Dream Chaser-新たな夢へ-』。11月3日まで上演され、10月30日にはライブ中継・ライブ配信も行われる。月組の伝統と新たな息吹を感じる、清々しくもエネルギッシュな舞台をレポート。(取材・文/小野寺亜紀)

INTERVIEW & SPECIAL 2021 10/21 UPDATE

宝塚歌劇団の博多座公演は、2019年の宙組公演『黒い瞳』『VIVA! FESTA! in HAKATA』以来、約2年8カ月ぶり。劇場正面左手に設置された大型ビジョンには、トップコンビの姿が大きく映し出され、それを人々が次々とカメラに収めてゆく。新トップコンビお披露目の幸せな空気感や、久々の宝塚博多座公演への期待感が、劇場内外に溢れているようだった。

『川霧の橋』は、1990年に当時の月組トップコンビ、剣幸とこだま愛のサヨナラ公演として上演された日本物の名作。芝居巧者のトップコンビをはじめとする月組生の名演が、今も心の中に刻まれている人は多いだろう。長年再演が望まれていたが、同じ月組で31年ぶりにかなった。

山本周五郎原作の「柳橋物語」「ひとでなし」をベースに、数々の宝塚の名作を生んだ故・柴田侑宏氏が脚本化。江戸下町、隅田川界隈を舞台に、明るく暮らしていた市井の人々が、突然の大火を機に運命の荒波にもまれながら、懸命に生きてゆく姿を鮮烈に描き出した。

再演では小柳奈穂子氏が演出を担当し、初演の形をしっかり受け継いでいる。ひと言台詞の言い回しまで、当時の舞台を彷彿とさせるのは驚きだ。初演アドバイザーとして剣幸とこだま愛を迎え、初演にも出演した専科の京三紗、梨花ますみも芝居に参加。スタッフまで初演に関わったベテランたちを揃えている。近年の再演もので、ここまで徹底しているのは珍しく、それだけ宝塚にとって大切な作品ということだろう。

幕が上がって間もなく、月城かなとらメインの男役たちによる和太鼓の生演奏で「祭り」が始まる。江戸っ子たちが手ぬぐいやうちわを手に、速いテンポで生き生きと歌い踊り、粋な風情が客席まで押し寄せる。最後は演者がズラッと横並び。博多座の空間に溶け込む『川霧の橋』の世界を、まずはここで一気に堪能できる。

祭りで楽しそうに踊る杉田屋の大工・幸次郎(月城かなと)と、幼馴染のお光(海乃美月)。その後幸次郎は杉田屋を継ぐ若棟梁に選ばれ、兄弟弟子の半次(鳳月杏)と清吉(暁千星)が後見に着くが、不服な清吉は、幸次郎がお光を好きなことを知ったうえで、お光に「待っていてくれ」と言い残し上方へ。そうして、江戸の町を大火が襲い、運命の歯車が狂っていく。

長年慕っているお光を前にすると、照れてぶっきらぼうな態度をとる幸次郎。その不器用さが誠実で愛嬌ある人間味につながり、いざとなると男気溢れる“熱さ”をたぎらせる月城の幸次郎。和物を多くこなしてきた月城にとっても、江戸の人情ものの芝居は挑戦だとインタビューで語っていたが、キレのある台詞回しや目力の強さが、細やかな芝居を引き立て、お光への一途すぎる想いをラストシーンの名台詞に凝縮させた。

清吉の告白を受けても、どこかポーッとしている初々しいお光。年若い彼女が、その後さまざまな試練を乗り越え、心は傷つきながらたくましく成長していく姿を、海乃は芯のある演技で鮮やかに見せた。この作品はお光の物語でもあり、だからこそ観客みんなが「幸せになってほしい」と望み、彼女の表情一つひとつが脳裏に焼きつく。

半次を演じた鳳月杏は、もともと芝居も歌も男役としてのしぐさ等も達者だが、その実力をいかんなく発揮していた。相模屋の箱入り娘・お組(天紫珠李)を密かに慕い、後ろ姿にまで想いの深さがにじむ。終盤で、ある覚悟を決めた半次の目に、キラリと光るものを見たときはたまらなかった。

この作品の中で唯一の悪人と言える清吉を演じた暁千星は、お光に告白するあたりはその心持ちを表に出さず爽やかにさえ見える。これならお光も騙されてしまうな、という役作りなのだろう。物語が進むにつれて、清吉の性根の悪さが露呈していくが、まるで周りなんてお構いなしという残酷な軽さを、暁はうまく出していた。

他にもお光の思慮深い祖父・源六役の光月るう、芸妓・小りん役で観客のクスッという笑いも引き出していた晴音アキ、杉田屋の棟梁・巳之吉をはじめ複数の役を演じ分けていた夢奈瑠音など、下級生にいたるまで細かい芝居を織り込み、生き生きと江戸の世界を博多座に立ち上がらせた。

また改めて、柴田侑宏氏がひと言の台詞にまで人物の生き様を反映させているのを実感。歌詞が自然に心情とリンクし、故・寺田瀧雄氏が生んだ、ときに情緒豊か、ときに激しいメロディーによってさらに観客の心に深く突き刺さる。この緩急ある名曲の数々が物語を彩っているからこそ、観客は『川霧の橋』がますます忘れられず、特別な作品となるのだろう。

 

ショーの『Dream Chaser-新たな夢へ-』は、前月組トップコンビ、珠城りょう・美園さくらの退団公演として今年上演されたものを、一部新たなシーンや曲に変更して上演。「夢を追うひたむきな情熱」がテーマのこの作品が、新生月組の門出にぴったりなのだということが新たな発見だった。

夢を追いかけ未来を見据える華やかなプロローグ。月城は最後に一人残り、ソロで「新しい夢に」というポップス調の新曲を明るく歌い上げ、客席からは自然と手拍子が。「心に響く 胸の高鳴り」と、トップになった気持ちを歌い上げるような清々しい歌詞だった。

さらに色気ある鳳月たちのスパニッシュや、男役同士の絡みもある粋で格好いいタンゴと続く。タンゴの「ミロンガ」では大劇場公演と違って、新トップコンビの月城と海乃がペアで踊るのだが、二人の親密さを感じさせる細かい振りにドキリとさせられる。暁は新たにK-POPのシーンをメインで担い、豊かなアイドル性を感じさせるオーラを振りまいた。

中詰めの和風ロックも激しいダンスの連続で目が離せず、“生命のうた”が響き渡る「Hymn of life」の場面は新たに月城を中心に壮大な楽曲を歌い踊る。この場面もそうだが、月城が月組生をぐるりと見渡すシーンが結構あり、月組生も満面の笑顔で返す様子に心が洗われる。全員が伸び伸びとしていて、すでにチームワークも万全の様子だ。

フィナーレでは、博多座仕様の大階段で、黒燕尾の男役たちがかなりエネルギッシュに踊る。「フォッ!」という掛け声をかける月城の、凛々しい黒燕尾姿が眩しい。さらに月城と海乃の新しいデュエットダンスが披露され、途中、ふざけ合っているような仲睦まじい芝居仕立ての振付が、何度も舞台で組んできた二人ならではの微笑ましい空気感を生み出していた。

往年の名曲で新たに展開する、黒燕尾の男役たちと月城、海乃のダンスは、大劇場公演とはガラリと違う明るいテイスト。麗しくもチャーミングなトップコンビに相応しいダンスが続く。そのあとの月城が一人残って踊る場面では、伝統を継承する“月組イズム”が詰め込まれた不意打ち的な展開が待っていて、観客はグッとくるはず。

そしてパレードでは、大羽根を背負った月城かなとが登場。万雷の拍手を受けていた。博多座公演では毎公演、トップスターの月城の挨拶があるのも嬉しいところ。「博多座にまた足を運んでくださったら嬉しいです」などと爽やかに挨拶していた。

【公演データ】
宝塚歌劇月組 博多座公演
江戸切絵『川霧の橋』-山本周五郎作「柳橋物語」「ひとでなし」より-
スーパー・ファンタジー『Dream Chaser-新たな夢へ-』

2021年10月11日(月)~11月3日(水)博多座

『川霧の橋』
原作:山本周五郎 脚本:柴田侑宏 演出:小柳奈穂子
『Dream Chaser-新たな夢へ-』
作・演出:中村暁
出演:月城かなと、海乃美月、他

公式URL https://www.hakataza.co.jp/lineup/202110/takarazuka/index.php

【ライブ配信データ】
2021年10月30日(土)16時公演でライブ中継・ライブ配信を実施。

◆映画館でのライブ中継
販売期間:10月23日(土)11時~10月29日(金)12時
料金:4400円
会場:全国各地の映画館

◆ライブ配信
販売期間:10月23日(土)10時~10月30日(土)16時
視聴方法:「Rakuten TV」および「U-NEXT」にて配信
視聴料:3500円

詳細URL https://www.tca-pictures.net/vod/live/#kawagiri


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