インタビュー & 特集
「『あ、頑張ろう』と思っていただけたらいいな」愛希れいかさんインタビュー
ジェニファー・ビールス主演の映画『フラッシュダンス』が公開されたのは1983年。テーマ曲『What A Feeling』が、麻倉未稀がカバーして『スチュワーデス物語』の主題歌として一世を風靡したことを覚えている方も多いのでは? レオタードで踊るダンサーや、ブレイクダンス、オーディションなどが一気に身近なものとなりました。ミュージカル『Wedding Singer』で『フラッシュダンス』のパロディが登場したのも記憶に新しいところ。その名作をミュージカルにした『フラッシュダンス』が満を持して上演されます。主演は「今、もっともダンス・ミュージカルに主演してもらいたい女優」として文句なしの愛希れいかさん。『エリザベート』『ファントム』と歌がメインの作品が続いていただけに、期待が高まります。
(撮影:藤記美帆 文:小柳照久 ヘアメイク/杉野智行(NICOLASHKA) スタイリスト/山本隆司 )
INTERVIEW & SPECIAL 2020 9/9 UPDATE
●単独主演おめでとうございます。発表の時にピッタリのキャスティングだと思いました。久しぶりにダンス満載のミュージカルですね。
日本でダンスが主体のミュージカルってパッと思いつくものがなかなかないので、出会いに感謝です。コロナの影響による自粛期間もあったので、今、稽古していて、踊りの感覚を戻すのに必死なんですけど、やっぱり踊りが好きなので、またお客様にもお見せできるのはすごくうれしいなと思いました。ちなみに、キャスティングされた時「つなぎが似合いそうだから」と言われたんです(笑)。「つなぎ、着れます!」と即答しました!
●映画ではブレイクダンスが初めてハリウッド映画に登場しました。今回の舞台ではどんなダンスが登場するんでしょうか?
ジャズ・ダンスを基本とした振付です。でも、バーで働くシーンでは、それっぽい雰囲気な踊りが登場しますし、ブレイクダンスを専門にやっているダンサーもいるのでそういう振りがでてきたりします。私も新しい踊りに興味があるので、できる限り身に着けたいなと思っています。
ストーリーのベースは映画版を踏襲しています。昼は製鉄所で働き、夜はハリーが経営する小さなバーで踊っているアレックスですが、舞台版はアレックスの過去や、アレックスの恋人で製鉄所の次期社長・ニックの葛藤、アレックスの親友グロリアのことなど、登場人物一人ひとりが掘り下げられていて、より人物像がわかりやすくなっているんじゃないかなと思います。
●アレックスはオーディションでライバルたちの姿に圧倒され、一瞬自信をなくしてしまいます。
私もそんな経験、あります。音楽学校の受験のとき、数人ずつグループになって踊るんですけど、私の直前にあまりにも踊れる子がいましたし、歌の試験でも自分の前の子がめちゃめちゃ歌えてて「今すぐ帰りたい」と思いました!「でも次出番だから」と自分を鼓舞していたので、自分のスタイルに自信をなくすアレックスの気持ち、すごくわかります。
●『フラッシュダンス』のオーディションは知らない人たちの中でのオーディションですが、愛希さんの普段の姿も、実力もわかっている中で踊る宝塚の劇団内のオーディションの場合は、そうでもなかったのでは?
踊る時は知り合いの前だろうが、知らない人の前だろうが、どんな時も緊張します。むしろ知っている人たちの前で受けるほうが嫌かもしれません。下級生の頃は「この子、どのくらい踊れるんだろう」と見られましたし、普段を知っている人に「今日は調子が悪いな」と思われるのも悔しいですし。
●愛希さんたち宝塚歌劇団の95期生はスターの宝庫ですが、さぞ優秀な方が多かったんでしょうね。
どうなんでしょう? 音楽学校時代はそう言われたことなかったんですよ。むしろ、どんぐりの背比べと言われてたんです。みんな仲良くて、何事も一緒に楽しむのが好きな期でした。今年、同期が二人も星組・花組のトップスターとして就任して、ほかにも主要スターがこんなに出てくるなんて思いもしませんでした。きっと当時からそういう素質はあったんでしょうけど、一緒にいすぎてわからなかったです。
●映画『フラッシュダンス』には「What A Feeling」「Maniac」「Gloria」「Manhunt」など、誰もが耳にしたことがあるであろう有名なナンバーがたくさん登場し舞台版にも引き継がれています。さらに新しい曲も追加されています。ミュージック・ビデオのような構成だったのでうっかり誤解してしまいますが、映画『フラッシュダンス』はミュージカルではない!
実は映画では誰も歌ってないんですよね(笑)。舞台版ではお馴染みのダンスナンバーのほか、新しい歌が加わっています。1980年代を彷彿とさせる、ホイットニー・ヒューストンのようなフィーリングを感じます。私が今まで出演してきたミュージカルとは違った曲調で、さらにそれを踊りながら歌わなくてはならないので、「ああっ」となってます(笑)。今まで歌ったことがないジャンルなので、曲自体はとても素敵なんですけど、難しいですね。
今回はダンスも歌も新しい自分がどれくらいできるのかってチャレンジが多く、新しいものに触れるたびに刺激を感じています。「まだまだだな」とガックリすることもあるんですけど、私は新しい物好きで「やってみたい!」「追求したい!」という気持ちが強くなるので、今回いろんなジャンルのダンスや音楽に触れて楽しみながらお稽古してます。
●『ファントム』でシャンドン伯爵として恋人役だった廣瀬友祐さんが『フラッシュダンス』では製鉄所の次期社長にして恋仲になるニック役で出演されます。
ヒロさんは一緒に演じたことがある方なのですごく安心感がありました。『ファントム』は宝塚を退団して二作目だったのですが、今回短いスパンでまたご一緒させていただくので、撮影の時も気兼ねなくというか、お兄ちゃんみたいな感じで、心強いです。私、そうは見えないと言われますが、ほんとはすごく人見知りなんです。でも「はじめまして、こんにちは」に慣れないといけない。人見知りと言いだしたら負けだなと思ってますし、今回はコロナの影響でコミュニケーションがとりにくい状況ということもあって、初共演の皆さんのことも最初から「知らないけど知ってる」くらいに意気込んでます!!
●c.c.役の植原卓也さんとは『エリザベート』でご一緒されてますね。
卓也さんは退団した最初の作品『エリザベート』で、私がむちゃくちゃ緊張している時に、同じ事務所ってこともあって、声をかけてくださったのが最初の出会いでした。それから仲良くさせてもらってます。残念ながら『エリザベート』では役としては全く交わることがなかったので今回ご一緒できるのがとてもうれしいです。でも、プライベートではすごく優しいのに、敵対する役だから、ビックリするくらい素と違う顔で迫ってくるのがすごく嫌ですね(爆笑)。「触らないで!」って台詞があるんですけど、ホント嫌!(笑) 心からその台詞が言えるようなお芝居をされるので必見です。
●ファンの方にメッセージをお願いします。
何よりもまず、本当にありがとうございますと感謝の気持ちをお伝えしたいです。エンターテインメントを必要としてくださることが本当にうれしいです。『フラッシュダンス』ではアレックスの一歩踏み出す勇気が描かれています。いろんな人に背中を押してもらったり、自分自身も頑張ろうと思って踏み出します。観終わった時に前向きになれる作品です。また、ダンスシーンもすごくエネルギッシュでとても元気になれます。「あ、頑張ろう」と思っていただけたらいいなと、この作品に取り組んでいます。楽しみにしていてください。客席が半分になったとしても、お客様の前でお芝居できることは幸せだと感じています。
愛希れいかさんのインタビューは、9月10日(木)発売の『omoshii press オモシィプレス』vol.9にも掲載されています。ご購入はomoshii online shop もしくはお取り扱い書店まで。
[プロフィール]
愛希れいか(まなき・れいか)
1991年8月21日生まれ、福井県出身。
2009年宝塚歌劇団月組に配属。2012年月組トップ娘役に着任。2018年にミュージカル『エリザベート』エリザベート役を持って宝塚歌劇団を退団。2019年ミュージカル『エリザベート』に主演。今年12月からミュージカル『The Illusionist-イリュージョニスト-』に出演する。
[公演情報]
ミュージカル『フラッシュダンス』
東京公演/9月12日(土)~ 9月26日(土) 日本青年館ホール
名古屋公演/10月3日(土)~10月4日(日) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
大阪公演/10月8日(木)~ 10月11日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
原作:トム・へドリー&ジョー・エスターハス作
パラマウント・ピクチャーズ映画『FLASHDANCE』
脚本:トム・へドリー(映画『FLASHDANCE』)&ロバート・キャリー
音楽:ロビー・ロス
作詞:ロバート・ケイリー&ロビー・ロス
日本版脚本・訳詞・演出:岸谷五朗
出演:愛希れいか/廣瀬友祐 桜井玲香 福田悠太(ふぉ~ゆ~) 植原卓也 Dream Shizuka 石田ニコル なだぎ武 松田 凌 大村俊介(SHUN) 秋園美緒/春風ひとみ 他
東京公演チケットのお問い合わせ:チケットスペース 03-3234-9999(平日10:00-12:00/13:00-15:00)