インタビュー & 特集

舞台上で“喋れるようになる”とはどういうことか。考え続けています――『デスノート THE MUSICAL』横田栄司さんインタビュー

大ヒット漫画『DEATH NOTE』(集英社『週刊少年ジャンプ』)を原作に、作曲家にフランク・ワイルドホーン、演出家に栗山民也、音楽監督にジェイソン・ハウランドというスケールの大きなプロジェクトで生み出された、オリジナルミュージカル『デスノート THE MUSICAL』。2015年に初演されて以来、日本人キャストの海外公演、ライセンスの輸出による韓国版公演も成功をおさめました。そしていよいよ2020年1月から、オール新キャストで幕が上がります。オモシィでは、雑誌『オモシィマグvol.17』での村井良大さん&甲斐翔真さん対談に続いて、リュークを演じる横田栄司さんにインタビュー。インタビュー後半では、“横田さんと音楽”についても振り返っていただきました。横田さんの演劇体験の原点とは?(取材・文/千葉玲子、撮影/藤田亜弓)

INTERVIEW & SPECIAL 2019 12/19 UPDATE

人間の悪魔的な部分と
悪魔の人間的な部分が混在している作品

――『デスノート THE MUSICAL』のリューク役に決定したときの心境はいかがでしたか?

すごくびっくりました。これだけ本格的なミュージカルの世界からお声がかかるとは思っていなかったので、「僕でいいの?」って。それと僕は初演から観ていたので、引き受ける段になって、重圧みたいなものも感じましたね。人気作だと重々承知していましたから。やるからには、ちゃんとやらなきゃな、と。

――原作はお読みになっていたのですか?

最初は映画を観たんです。それから漫画を読んで、ミュージカルを観て、という順番でした。

――もともと、漫画を読むのはお好きですか?

漫画は好きですけど、どうだろうなあ。この作品はある種のファンタジーですよね。ファンタジーよりは、ギャグ漫画やスポーツ漫画のほうが読んでいるかもしれないです。『SLAM DUNK』と『行け!稲中卓球部』は全巻持っているんですよ。

――ストーリーや人物造形について、横田さんがおもしろいと感じたところは?

まず、“デスノート”の存在が大発明ですよね。このノートが主役というか、そこから先はどうにでもなる。原作者の方はスゴいものを考え出したなと。

さらにそのノートを介して主人公(夜神 月)と死神(リューク)が出会って、影響を与え合う。Lのキャラクターにしても、リュークとレムの関係にしても、一つ一つの発想がおもしろいですよね。リュークとレムは、恐ろしい魔術の使い手でありつつ、やりとりは夫婦漫才のようでもあり、どこかちょっと人間臭かったりして。

人間の悪魔的な部分と、悪魔の人間的な部分が混在している作品だと思います。死神をより人間らしく演じたら、死神としての造形がより深まるんじゃないかと、今は勝手に想像しているんですけれども。悪魔的な人間との対比でね。

――リュークの好きなところはありますか?

セリフから推察するに、退屈で退屈で仕方ないらしいんですよ(笑)。だから“人間を使って遊ぶ”というか(リュークはデスノートをわざと人間界に落とす)、昔の貴族みたいな悪趣味な遊び方をしているところは、ちょっと好きですね。これは皮肉ですけど、「人間らしくていいな、リューク」と思うんです。

もちろん、今は現実でそんなことをやろうって人はいないけど、時代を遡ると、そういう貴族の遊びがあったわけです。たとえばスパルタカスみたいに、奴隷を使って決闘をさせたり。

シェイクスピアをやっていても、そういう貴族がよく出てくるんですよ。ヒマでやることがないから恋をしているとか、ヒマだからマルヴォーリオをいじめてやろうとか。

(『十二夜』の)サー・トービーにしてもアンドルーにしても、毎日夜中の2時まで酒飲んでるんだから(笑)。で、ヒマでヒマでしょうがないから、「マルヴォーリオが恋してるらしいよ?」って、いたずらを企てる。彼らのモチベーションに“ヒマだから”っていうのがある。ヒマだから人を使って遊んでやろうっていうその根性、その毒々しさというか…なかなか痛快な悪ですよね。そこは、俳優にとって楽しいんじゃないでしょうか。

リュークとして歌うポイントは不真面目さ
努力して、いい加減な死神に?

――リュークとレムが歌う『哀れな人間』のミュージックビデオが公開されていますが、撮影秘話を教えてください。

冒頭に、僕(リューク)がノートに名前を書くシーンがあるんですが、実は藤原竜也くんの名前を書いていました。「ふ~じ~わ~ら~た~つ~や~」って(笑)。

――(笑)。

まあそれは冗談なんだけど(笑)、やはり、パク・ヘナさんがすごい方でしたね。

――韓国版『デスノート THE MUSICAL』でもレムを演じた方ですね。

ものすごく努力家なんです。初めて日本語の歌詞で歌うわけですが、プライベートでもかなり日本語を勉強されていて。最初にお会いした日に一緒に歌稽古をして、しばらく経ってまた一緒にリハーサルをして、リハの翌日に撮影本番だったんですが、会うたびに日本語が上手になっていくんです。

普段はほわーんとしていらっしゃるんですが、歌っているときはすごく腹が据わった、“火柱”みたいな方。彼女の魂が込もった歌声を聴いて、本当に感動しましたね。

撮影でヘナさんとご一緒したことで、やっと僕も覚悟が決まってきたところがありました。こんなに頑張っている人がいるんだ、と。僕はまだそれまでどこかフワフワしていて…歌、大丈夫かな?できるかなって…ちょっとネガティブな心の向き合い方だったんですが、ヘナさんのおかげでスイッチが入ったというか。撮影の何日間か、とても良い時間を過ごさせていただきました。

――歌稽古は歌唱指導の先生と進められたのですか?

ボイストレーニングやレコーディングでは、歌唱指導のちあき(しん)さんがずっとついてくれて、音楽監督の塩田(明弘)さんも一度来てくれましたね。

――どんなディレクションがありましたか?

歌詞を言葉として語る、歌いながら語る、ということを大事にされていました。とくにリュークというキャラクターは、不真面目なんだと。それが、なんとも難しいところなんですよね。僕は一生懸命やらなきゃいけないんだけど、お客さんに見えるものとしては“不真面目”でなきゃいけない。僕の努力や勤勉さが出てしまうと、ちょっともったいないよね?と言われて。それ、よくわかるなあ、うまいこと言うなあと思いました。

本格的に稽古が始まったら、音楽的なことだけじゃなく、栗山(民也)さんからのサジェスチョンも増えていくなかで、いかにリュークに近づけるか。なるべく努力して“いい加減な死神”になりたいなと思います。

高校時代の文化祭が、演劇体験の原点
3年生のとき『オペラ座の怪人』でファントムを演じた

――横田さんは、栗山さんが演出された音楽劇『ピアフ』や『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』など、歌がある作品にも出演されていますが、たとえば子どもの頃に楽器を習っていたとか、あるいは学生時代など、俳優になる前から音楽に親しんでいたのでしょうか?

子どもの頃から、音楽はずっと好きだったんですよ。小学校4年生か5年生の頃、運動会で鼓笛隊に立候補してトランペットを吹いたこともあったなあ。中学に入って、ブラスバンド部でチューバを吹いていました。パーカッションも少しやったかな。

並行してサッカーもずっと続けていたんだけど、あるとき、両膝をケガしてしまって。高校からはサッカーを続けられないなと思っていた時期に、初めてフォークギターを買いました。それで、軽音楽部で同級生とコピーバンドを作っていました。BOØWYとかブルーハーツとか、ZIGGYとか。

兄の影響も大きかったですね。3歳上の兄が、中学の頃に洋楽を聴き始めたんです。その頃売れていたのは、スターシップだとか、マイケル・ジャクソン、シンディ・ローパー、マドンナ…80年代のUSAポップスですね。ちょうどクイーンが『RADIO GA GA』という曲をリリースした頃で、イギリスの音楽も日本に入ってきて。デュラン・デュラン、ボーイ・ジョージ、ワム!、フィル・コリンズ…いろいろ聴いていました。

――ちなみに、コピーバンドではどのポジションを?

ドラムが多かったかな。僕らの時代ってバンドブームだったし、とにかく楽しかったですね。

それと、文化祭がすごく賑やかな高校だったんです。僕は文系クラスだったんだけど、1年生は教室で演劇を、2年生はVHSのビデオカメラで映画を撮る。そして3年生は、教室でミュージカルを上演する。そういうことが盛んな学校で、僕らのクラスは『オペラ座の怪人』を上演したんです。

――すごいですね…!

それが、すごく楽しかったの!…まあ、ほんとに申し訳ないんですけど(笑)、僕がファントムを演りまして。

――そうだったんですか!

そう。同じバンドでボーカルだったイケメンの友人がラウルをやって、僕がファントムで。それがけっこう評判が良くて。教室だから50人くらいしか入れないんだけど、廊下まで行列ができるくらい。今こうしてインタビューを受けているうちに、文化祭でミュージカルやったなあ…って思い出しましたよ(笑)。

――それは観たかったです! 1年生のときは何を上演したんですか?

大林宣彦監督の映画『転校生』をお芝居にして、教室で上演しました。そのときも、なぜかすごく評判が良くて。楽しかったなあ。あの頃の体験が、どこかで今の自分につながっているんですよね。今思えば、高校時代の文化祭が、僕の演劇体験の原点でした。

――そうだったんですね。

今でも、当時の同級生が芝居を観に来てくれて、「いつまで文化祭やってるの(笑)」って言われたりして。もちろん冗談だけど、「文化祭を商売にした男」って(笑)。

――最高の褒め言葉ですね(笑)。

先日も、『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』を観に来てくれた中に、お子さんが同じ高校に通っている同級生がいて、「今でも文化祭、すごいよ」って教えてくれましたね。

舞台の上で“喋れるようになる”とはどういうことか
大きな命題として、ずっと自分の中にある

――以前リュークを演じられていた吉田鋼太郎さんとは、数多くの舞台を一緒に作ってこられました。2020年6月には彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾『ジョン王』(演出:吉田鋼太郎)も控えていますが、改めて、横田さんから見て吉田鋼太郎さんはどんな存在ですか?

鋼太郎さんは、公私にわたって師匠ですよね。師匠であり、蜷川(幸雄)さんの元では兄弟弟子でもあり、もちろん、素晴らしい演出家としての側面も僕は知っていますし。僕にとっては、道標(みちしるべ)のような特別な存在ですね。

――吉田鋼太郎さんからこういう言葉をかけてもらったとか、印象的なエピソードがありましたら、この機会に教えてください。

そうですねえ…鋼太郎さんはおそらく覚えていないと思いますけど、20年近く前のことを今でも覚えていて。

若い俳優を見ていると、「こいつは役者で続けていけるタイプだな」とか、「きっと途中でやめちゃうかな」とか、だいたい当たるようになってくるらしいんです。その話の流れで、「横田は大丈夫だよ」と。餅つきの餅みたいに、ぺったんぺったん…粘り強く続けていくんじゃないの?お前は、って言われたのを覚えていて。急にドカンと売れるとかじゃなく、餅みたいに続けていける能力があるって。まあ実際に今、そんな感じだしね(笑)。しつこくしつこく、粘り腰で、なんとかこの世界に張り付いているというか。

もう一つ、「横田は、感情はいつも満タンにあるから、あとは喋れるようになれば鬼に金棒だよ」と言われたことがあって。これは『グリークス』のときだったかな…? じゃあ、“喋れるようになる”ってどういうことなんだろう?と、今でもずっと考え続けていますね。鋼太郎さんレベルの人が言う、“喋れるようになる”って…。

僕ら役者にとって「セリフが伝わるか、伝わらないか」というのは、稽古場でも本番が始まってからも、常に問題になるわけで。それを、あるとき、「横田ぐらい喋ってくれると気持ちいいよね」って鋼太郎さんから言ってもらえたりすると、ああ、じゃあ今は、多少は鋼太郎さんの中で“喋れる側の役者”に入ってきたのかなと思えたりして。

そうだったら嬉しいし、それでもまったく油断しているわけじゃなくて、舞台の上で“喋る”ってどういうことなのか、いつも模索していますね。これからもずっと、大きな命題として自分の中にあり続けるんじゃないかと思います。

横田栄司(よこた・えいじ)
1971年生まれ、東京都出身。94年に文学座研究所入所、99年に座員となる。劇団内外の舞台に加え、TVドラマ、映画など幅広く活躍。『ロミオとジュリエット』、『ハムレット』、『リチャード三世』、『リア王』、『ジュリアス・シーザー』をはじめ多くの蜷川幸雄演出作品で重要な役どころを担い、蜷川シェイクスピアに欠かせない存在であった。ほか、串田和美、鵜山仁、栗山民也、三谷幸喜、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、長塚圭史、上村聡史らの演出作など出演多数。近年の舞台に、『レインマン』、『あかつきの湧昇流』、『The Silver Tassie 銀杯』、『ヘンリー五世』、『オレステイア』、『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』など。2020年6月、彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾『ジョン王』(演出:吉田鋼太郎)にジョン王役で出演予定。

【公演情報】
『デスノート THE MUSICAL』
音楽:フランク・ワイルドホーン
演出:栗山民也
作詞:ジャック・マーフィー
脚本:アイヴァン・メンチェル
出演:村井良大、甲斐翔真、髙橋颯、吉柳咲良、西田ひらり、パク・ヘナ、横田栄司、今井清隆/川口竜也、小原悠輝、金子大介、鎌田誠樹、上條駿、長尾哲平、廣瀬真平、藤田宏樹、本多釈人、松谷嵐、渡辺崇人、石丸椎菜、大内唯、コリ伽路、華花、濵平奈津美、妃白ゆあ、町屋美咲、湊陽奈、森莉那
【東京公演】2020年1月20日(月)~2月9日(日) 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
【静岡公演】2020年2月22日(土)~23日(日) 清水マリナート
【大阪公演】2020年2月29日(土)~3月1日(日)梅田芸術劇場 メインホール
【福岡公演】2020年3月6日(金)~8日(日)博多座
※詳細はhttps://horipro-stage.jp/stage/deathnote2020/を御覧ください。

撮影:萩庭桂太 ©大場つぐみ・小畑健/集英社


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