インタビュー & 特集

教わったことをきちんと突き詰めていくーーシネマ歌舞伎『女殺油地獄』松本幸四郎さんインタビュー

2018年1月の歌舞伎座で、二代目松本白鸚、八代目市川染五郎とともに、十代目松本幸四郎を襲名。約2年間に及んだその襲名披露興行から、昨年7月に大阪松竹座「七月大歌舞伎」で上演された『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』がシネマ歌舞伎として全国公開されることとなった。この演目をシネマ歌舞伎にしたいと熱望したのは幸四郎自身。松竹撮影所の全面協力のもと、従来にはない撮影方法も取り入れた。その新たな試みに込めた思い、そして、十代目として受け継いだ“松本幸四郎”のこれからを聞いた。
(文/大内弓子 写真/増田慶 ヘアメイク/AKANE スタイリスト/川田真梨子 衣装協力/ポロ ラルフ ローレン[問]ラルフ ローレン 0120-3274-20)

INTERVIEW & SPECIAL 2019 11/2 UPDATE

シネマ歌舞伎は、劇場中継ではなく映画として成立させたい。
これまでにない撮り方にも挑戦した

──襲名披露興行では『勧進帳』など様々な演目が上演されましたが、そのなかから『女殺油地獄』をシネマ歌舞伎にされた理由をまずお聞かせください。

襲名披露公演が7月の大阪松竹座であるとわかったときにいちばんに思ったのが、そこで『女殺油地獄』をやりたいということでした。それは、今回の襲名披露で唯一こだわったことと言っていいかもしれません。というのも、2001年の博多座でこの狂言を初めてやらせていただいて以来、夏の時期に大阪でやりたいというのを目標にしていたんです。何しろ、殺しのある上方のお芝居ですから。そしてこういうドラマ性のある作品こそ、シネマ歌舞伎になり得るのではないかと思っていたので、シネマ歌舞伎で撮りたいと強く希望させてもらいました。

──では、そもそも『女殺油地獄』には特別な思いもおありだったということでしょうか。

もともと上方のお芝居が好きだったんですけれども、松嶋屋のおじさま(十五代目片岡仁左衛門)の『女殺油地獄』を拝見してとにかく素敵だなと思って、憧れたと同時に、主人公の与兵衛が目標とする役のひとつになったんです。ですから、その思いが叶ったときは嬉しかったですね。ただもちろん、観るとやるとは大きな違いで(笑)、松嶋屋のおじさまに一から全部教わることになりましたけど。

──『女殺油地獄』は、油屋の放蕩息子・与兵衛が、借金の返済に困り、同業の油屋女房・お吉を殺して金を奪って逃げるというお話。複雑な家庭環境による青年の孤独と狂気が、近松門左衛門によって巧みに描かれていて、現代にも通じる名作です。仁左衛門さんからはどんなことを教わられたのですか。

やはりまずは、与兵衛の心理の変化を細かく教えていただきました。そしてその気持ちがあったうえでですが、一つひとつの形がちゃんと計算して作られているということを教わったんですね。たとえば、拗ねて寝っ転がるときの足と手の位置、殺しの場面で油に滑って転ぶときの裾の乱れ方、すべてが絵として美しく見えないといけないんです。そこは想像していた以上に計算されていて、だからカッコよく見えるんだなということを感じましたね。

──今回の襲名披露は5度目の与兵衛でしたが、回を重ねたことで変化はあったのでしょうか。

むしろ逆に、最初に戻ったという感じでした。その間には、2011年のル・テアトル銀座『二月花形歌舞伎』と2014年の『四国こんぴら歌舞伎大芝居』で、何か自分なりの与兵衛はできないかと考えて、通常は殺しの場(豊嶋屋油店の場)で終わることが多いんですが、その後の与兵衛が捕まる「お逮夜」(豊嶋屋逮夜の場)を付けてやってみたりもしたんです。それも、2回とも解釈を変えて、テアトルでは捕まっても全然反省していない与兵衛、こんぴらでは本当に懺悔して捕まっていく与兵衛というふうに。でも今回は、最初に教わったことを大事にきっちりやろうと思って、ただただそれだけを考えていましたね。工夫をするより、教わったことをちゃんと突き詰めていくというのが、いちばん深くなっていくことなのかなと思ったんです。

──シネマ歌舞伎にするにあたっては、公演本番時だけでなく、観客の入っていない舞台稽古でも撮影をされたと聞きました。殺しの場面はカメラマンが舞台上に上がって撮ったり、ほかの場面でも客席にレールを設置したり、舞台上のカメラの台数を増やしたりと、これまでのシネマ歌舞伎にはない仕上がりになっていますね。

僕のシネマ歌舞伎に対する考え方としては、いわゆる劇場中継ではなく、映画館のスクリーンで観る作品として成立するものでありたい、というふうに思っているんですね。ですから、上演したものをひとつの材料として、どういう演出をすればそういう映像作品になるかということを考えて撮ってほしいということを、いつも監督さんにお願いするんです。なかでも今回は、松竹の映画を撮っておられる井上昌典監督だったのでカット割りなどは丸投げでお願いしたんですけれども(笑)、本当にいろいろな撮り方を考えてくださいましたね。でも、実現したのは考えていただいたことの1割にも満たなかったんじゃないでしょうか。もちろん今はこれがベストだとは思っていますけど。だから、これを第一歩として、シネマ歌舞伎の可能性はこれからまだまだ探っていけると思います。

※このインタビューの続きを、11月15日発売『オモシィプレス VOL.4』に掲載予定。十代目として受け継いだ“松本幸四郎”のこれからについて、じっくり語っていただいておりますので、ぜひチェックしてください! アザーカットもお見逃しなく!

【プロフィール】
松本幸四郎(まつもとこうしろう)
東京都出身。1973年生まれ。屋号は高麗屋。二代目松本白鸚の長男。79年歌舞伎座『俠客春雨傘』で三代目松本金太郎を名乗り初舞台。81年10月歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵 七段目』の大星力弥ほかで七代目市川染五郎を襲名。94年4月歌舞伎座『双蝶々曲輪日記 角力場』の放駒長吉、『熊谷陣屋』の堤軍次ほかで名題昇進。18年1・2月歌舞伎座『勧進帳』の武蔵坊弁慶ほかで十代目松本幸四郎を襲名。99年紀伊国屋演劇賞個人賞。03年芸術選奨新人賞。ほか受賞多数。

【作品情報】
シネマ歌舞伎第34弾『女殺油地獄』
11月8日(金)より東劇ほか全国公開
原作:近松門左衛門 監修:片岡仁左衛門(舞台公演)
出演:松本幸四郎 市川猿之助 市川中車 市川高麗蔵 中村歌昇 中村壱太郎 大谷廣太郎 片岡松之助 嵐橘三郎 澤村宗之助 坂東竹三郎 中村鴈治郎 中村又五郎 中村歌六
監督:井上昌典(松竹撮影所)
撮影公演:2018年7月大阪松竹座公演
製作・配給:松竹


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