インタビュー & 特集
「表に出てる情報だけが全てじゃない『GOZEN』」矢崎広さん×松村龍之介さん 対談
映画と演劇が連動して、一つの作品世界でそれぞれの物語を紡ぐプロジェクト「東映ムビ×ステ」。その第一弾として、9月12日より舞台『GOZEN-狂乱の剣-』が上演されます。7月に公開された映画『GOZEN-純恋の剣-』の御前試合を巡る物語の一部が明らかに。舞台版の主人公・望月八弥斗を演じる矢崎広さんと、八弥斗に対して敵意を向ける小松原蓮十郎役の松村龍之介さんにお話をうかがいました。(撮影/藤記美帆 文/臼井祥子)
INTERVIEW & SPECIAL 2019 8/29 UPDATE
●映画と舞台の連動企画ということで、お二人は昨冬に撮影された映画で顔合わせ済みですが、最初にあった時の印象はいかがでしたか?
矢崎 去年の12月『GOZEN-純恋の剣-』の僕の撮影初日に、太秦(撮影所)近くのコンビニで、太秦が開くまで一緒に時間を潰したのが初対面です。のすけ(松村)はもう(撮影に)入っていたんだよね?
松村 入ってました。
矢崎 「超A&G+『あさステ!』(動画付きインターネット配信番組)で松村くんが火曜日(のパーソナリティー)で僕が水曜日だね」って話をして。
松村 僕は(矢崎)広さんのことは舞台で拝見していて、シュッとしてる人という印象があったんですが、まさかコンビニで会うとは思ってなかったので、あの時はうまく言葉が出てこなかったです。「あー、あ、広さん」って(笑)。でも「寒いねえ」って優しく話しかけてくれて安心しました。尖った人だったらどうしようと心配してたんですけど、すごく柔らかい人で。
矢崎 昔は尖ってたけどね(笑)。のすけのことはすごく真面目でハキハキとした人というイメージでした。あの頃『あさステ!』ののすけくんの喋りはアナウンサー感があって壊れたところはなくて(笑)、本当に真面目で。あの日ほんと寒かったよね。僕ホッカイロ買いにコンビニに寄ったんだもん。
●そこから撮影現場で関係を築いていって…。
矢崎 いやまだ…。
松村 映画ではそんなに接点がなくて、これからです。
●先ほど、取材の撮影中に松村さんは矢崎さんのことを「大先輩」とおっしゃってましたね。
松村 大先輩です。
矢崎 いやいや。僕はせいぜい「中先輩」くらい。むしろ僕のことを先輩だと思ってくれているだけありがたい。
●やはり矢崎さんたちの世代は、松村さんたちの世代から見ると大先輩なのかなという印象があります。
矢崎 芸歴が長いのでそうなんですけど、僕らには変わらずに先輩がたくさんいるし……例えば役所広司さんのような方と現場でご一緒した時に、相手が大先輩だからって臆するわけにはいかないんです。だから実は先輩かどうかということは関係なくて、先輩でも後輩でも敬意は持っているし、対「人」としてものを見るようにしています。
松村 僕は矢崎さんの『BIOHAZARD THE STAGE』を観て「この舞台めちゃくちゃ大変だろうなあ」と思ったんですよ。それでその中で矢崎さんに、砂漠に生える雑草のように強くあろうとする生命力のようなものを感じて、「めちゃくちゃ素敵な人だな」と思いました。矢崎さんの戦い続ける姿を見て大好きになったんです。
矢崎 ありがとうございます!
●その矢崎さんが演じる八弥斗と、松村さん扮する蓮十郎は対決する役ですね。
松村 『GOZEN-狂乱の剣-』は『ハムレット』をモチーフにした物語です。八弥斗はハムレットで、蓮十郎がレアティーズ。だからもちろん対決しますし、僕は蓮十郎として全力でぶつかりたい気持ちはあるんですけど……ホン(脚本)を読んでないのでまだわからないんですが、おそらく矢崎さんは僕以外ともたくさん戦われるんですよ。だから全体のバランスもあるので、埋もれたくもないけど、強すぎてもいけないなと。あくまで物語の中でいいスパイスになれたらいいなあと思いますねー…。
矢崎 ふふ。でも見せ場ですよね。何もかもを奪われたと思っているレアティーズ(蓮十郎)と、本当に何もかもを奪われたハムレット(八弥斗)の対決。そこからいろんな連鎖で(登場人物が)バタバタと倒れていくので、間違いなく見せ場なんですよ、『ハムレット』においては。だけど、今作においては、山場はそれだけじゃなくて、まだまだいっぱいあるんです。
松村 そうなんです。
矢崎 だから二人の対決がどんなシーンになるかは、まだわかりません。意外にスッと終わるかもしれない。だから今あまり語らないほうがいいかなあと…(笑)。ですが、ぜひお客さんには期待してもらいたいポイントの一つだと思います。
●殺陣が大きな見どころの一つになると思いますが、お二人は殺陣は好きですか?
松村 僕は大好きです。もともとヒーローが好きでアクション全般が好きなんですよ。よく遊びで怪獣ごっこをしたり、中二病なんで(笑)何かと剣に見立てて、チャンバラしてました。女子に冷ややかな目で見られながら、そしてその視線がちょっと気持ちよかったりもして。
矢崎 はっはっはっは。
松村 その経験が生きてるんじゃないかな(笑)。いや僕、役者って最高の中二病だと思ってるんですよ。自分を良く見せるためのエネルギーって自分を好きじゃないといけないし。
矢崎 僕も殺陣は好きです。もっと好きになりたいと思って、剣術を習いに行ってました。いろんな殺陣があるんですよね。見せることを意識した殺陣もあれば、剣術が生かされるような芯を食った殺陣もある。アニメのような動きで作るか、人間っぽい動きに寄せるのか、それぞれの良さがあって。で、僕はいろんないいものを知ってしまったので、自分の中で理想がすごくでかくなっているので……理想に近づけるかなあ、頑張れるかなあというのが課題です。
●今回の舞台の見どころ、注目してほしいところを教えてください。
矢崎 まずはこんなにいろんなジャンルの役者が集まったことを楽しんでいただきたいです。浪岡(一喜)さんのようにあまり舞台に立たれない方もいるし、AKANE LIVさんもいらっしゃる!
●歌は歌わないのですよね?
矢崎 それはどうでしょう。まだわからないです。歌わなかったらもったいない気もしますね。この多彩な顔ぶれを楽しんでいただきたいのと、お話がとてもデラックスで、大ボリュームでお届けすることになりそうなので、そういうところを楽しみにしていただきたいです!
松村 『ハムレット』の魅力って悲劇であるところにあると思うんですよ。ハムレットが亡くなってしまうことが、観ている人の心を動かすという…。その『ハムレット』をモチーフにして、繋がる物語があって、さらに面白いものになっているはずです。僕らもまだプロットを読んだ段階で、びっくりしているんですけど。
●映画を撮影している時にはご存知なかった?
矢崎 全然知らなかったです。驚きの展開ですね。御前試合と聞いて、一対一の戦いばかりだと思って来る方も多いと思うのですが、そこはさすがの毛利さん、たぶん大乱戦があったり、「せっかくだから乱舞しようぜ」っていう、観て楽しいアクションシーンになるはずです。戦える人がいるじゃないですか。小松原烈山役の山本亨さんとかね。『ハムレット』でいえばポローニアスのポジションだから本来戦わないはずなんですが、戦える方なので、せっかくなので活躍してほしい……ということもあるかもしれません。
松村 少なくとも映画で観せられなかった部分、フラグが回収されるというか、映画を観て「ここはどうなるんだろう」と思われたであろう部分の展開が描かれるので、映画をご覧になった方にはその辺も消化しながら楽しんでいただけたらと思います。
矢崎 映画は「御前試合」のほんの一部を抜き出して描いた作品で、舞台では「それまでに何があったの?」「その後どうなるの?」を描いています。もちろん舞台単独でも楽しめるけど、舞台をご覧になったら映画も観たくなるんじゃないかなあ。ともあれ「表に出てる情報だけが全てじゃない『GOZEN』」って感じなので、ぜひ、楽しみに観に来てください!
[プロフィール]
矢崎広
やざき・ひろし
1987年7月10日生まれ、山形県出身。
主な出演作にミュージカル『薄桜鬼』シリーズ、『モマの火星探検記』『ジャージー・ボーイズ』、音楽劇『ライムライト』など。10月〜11月に舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』が控えている。
松村龍之介
まつむら・りゅうのすけ
1993年12月28日 生まれ、岩手県出身。
主な出演作に、斬劇『戦国BASARA』シリーズ、舞台『残響のテロル』、舞台「黒子のバスケ」シリーズ、舞台「劇団シャイニング from うたの☆プリンスさまっ♪『ポラリス』」や、映画『BLOOD-CLUB DOLLS1』などがある。
[公演情報]
『GOZEN-狂乱の剣-』
[東京]9月12日(木)~23日(月・祝) サンシャイン劇場
[大阪]2019年9月27日(金)~29日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
脚本・演出:毛利亘宏(少年社中)
出演:矢崎 広 元木聖也 前山剛久 松村龍之介 / 若月佑美
井澤勇貴 松本寛也 井俣太良 廿浦裕介 梅津瑞樹 上遠野太洸
AKANE LIV 山本 亨 波岡一喜
お問い合わせ:東映ビデオ カスタマーセンター TEL:0120-1081-46(月〜金10:00〜13:00、14:00〜17:00(土日祝 祭日を除く))
公式サイト https://toei-movie-st.com/stage