インタビュー & 特集

「イタの上に上がることの大変さ難しさを、あらためて実感しています」川原一馬さんインタビュー

1993年に初演され、繰り返し上演されてきた舞台『絢爛とか爛漫とか』。昭和初期の若い4人の文士たちの、夢と才能、理想と現実との葛藤や、恋や友情にもがく日々を描く青春群像劇です。稽古真っ盛りの8月上旬、文士の一人・加藤を演じる川原一馬さんにお話をうかがいました。(撮影/笹井タカマサ 文/臼井祥子)

INTERVIEW & SPECIAL 2019 8/19 UPDATE

●出演が決まった時のことを教えてください。

お話を頂いたのは今年の春頃です。演出の(鈴木)裕美さんからタイトルと「昭和初期の男4人の青春群像劇だよ」という話をうかがいました。『宝塚BOYS』に近いものがあるのかなと想像しながら、台本を読みました。

戦前の物語で、若い文士たちの話なので、言い回しや表現が遠回しだったり、言葉遣いが普段の僕らとは違っていますが、やっていることは現代の男の子たちでもありうること。だから読んでスッと入ってきました。

●川原さんが演じられるのは、自称・耽美小説家の加藤です。役についてはどう思われますか?

人の才能に憧れたり嫉妬したりといったことが描かれているんですけど、登場する4人の中では加藤はそれほど人と比べて生きているわけではないんですよね。自分の中のものを貫いてきて、本を書いている。一番年下だし、自分でも理解していない、無意識な部分もあるんじゃないかな。

はたから見たら気持ち悪い性的な妄想を語ったりもするのですが、そこはしっかりと像を頭の中に描きながらやろうと思っています。リアルにやればやるほど気持ち悪くできると思うので。

●加藤の妄想は、川原さんにも共感できる部分はありますか?

なくはないんですけど、加藤みたいにはなれないですよね。やはり周りの目を気にしていしまいますし。誰もがそういう欲望ってあるんじゃないかと思うんです。でも社会の中でちゃんとした人として存在するために、自分を偽ったり、感情を抑制したり。そこのリミッターをどう外すのか。すごくシンプルに本能的に外れるって感覚を一瞬で作れれば難しくないんじゃないかと思っています。

例えば稽古や受験勉強なんかで集中しているとあっという間に時間が過ぎてしまうじゃないですか。そういう時、周囲の目に意識はいかない。そういう感覚と近いんじゃないかなと。

●加藤は両親、特に母親に対して強い思いを抱いている人物でもありますね。

円満な家庭に育った方もいるでしょうけど、現代は家族との間に何か問題を抱えている方も少なくないと思うので、そこは共感してもらえるかもしれないと思っています。ただかなり高度なんですよね。けっこう深い話をしているのに、気持ち悪い部分とのギャップで笑わせないといけない。けれどそれを「笑いですよ」と提示してしまったら面白くないんです。加藤は本人にとってはとてもシリアスな話を酔った勢いで話す。それは3人との関係性があるからできることで、ただ重くなってもいけないし、ふざけてもいけない。

●その高度な芝居に、どうアプローチしていますか?

こういう感情を通って、こういう勢いでという段取りをしっかりと考えて、心の通り道をちゃんと通った上で表現の方向を選択する。丁寧に作らないといけないと思います。ただ、物語がその後重くなっていくので、僕自身の気持ちとしては笑うほうに盛り上がっていかないといけないという使命感も持っていて、今本当に試行錯誤しながら稽古をしています。

裕美さんから加藤については最初に「こういうキャラクターだから」という設定のみうかがっています。だから僕の考えなのですが、加藤は4人の中ではバランスを取りに行く役回り。会話を円滑に流したり、ここから楽しくしましょうよって空気を変えたり、寄り添ったり、そういうことをセリフにないリアクションで伝える役なんじゃないかな。

●物語のテーマである、文士たちの夢と才能を巡る葛藤は、俳優というお仕事にも共通するものかと思います。

それはありますね。周囲を見ても、古賀みたいなタイプは多いし、僕も古賀のセリフにはすごく共感できます。古賀ほど自分の中に「こうでなければならない」というものがあるわけではないですが。自分が書いたら作品になる小説家と違って、役者は自分が出たいというだけで作品に出られるわけではないので、違う部分もあると思うけど、うまく表現できなかったり、舞台に立つのが怖いと感じたり、そういうものを抱えながら、役者の仕事が好きで執着してやっている、その感覚は近しいものがあると思います。

加藤のセリフにもあるんですけど「役者でいるためにしなきゃいけねぇことは、イタの上に上がること、それだけなんですよ」って。本当にその通りだと思うし、その大変さ難しさをこの作品を通して、あらためて実感しています。

ぶっちゃけた話、昔は本当に「売れなきゃ意味がねーんだ」って思った時期もありました。壁にぶち当たって、現実を突きつけられて打ちのめされたことも。でも今この歳になってくるともっと違うことを考えるようになるんですよね。あらためて自分が役者でいる意味ってなんだろうとか。

僕は割と小さい頃からこの世界にいるから、振り切れるのも早かった。人が売れること成功していくことに対して、今はもうそこまで焦りや嫉妬、悔しさを感じないんですよ。それより今この作品で何をしたいか、自分がどうありたいかってことのほうが大事。それが僕のプロ意識なのかもしれないですね。

●最後にこの作品の見どころをお願いします。

観る方次第で受け取るものが違う作品だと思っています。たくさんあるセリフのひとつひとつにメッセージがあって、お客様それぞれに刺さる言葉は違うんだろうなと。最初は物語を追うので精いっぱいだろうと思うのですが、序盤から、なんでここでこう言ったのかというジャブが緻密に積み重ねられている作品なので、できたら何度も観ていただきたいです。4人それぞれに注目して見ると見え方も変わってくると思うので、より面白く観ていただけると思います!


かわはら・かずま
1990年12月26日生まれ、静岡県出身。
子役を経て、ドラマ、舞台で活躍。最近の主な舞台にハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』シリーズ、『宝塚BOYS』『イヴ・サンローラン』など。11月にA NEW MUSICAL『In This House〜最後の夜、最後の朝〜』に出演する。


[公演情報]

『絢爛とか爛漫とか』

8月20日(火)~9月13日(金) DDD青山クロスシアター
作:飯島早苗
演出:鈴木裕美
出演:安西慎太郎 鈴木勝大 川原一馬 加治将樹
http://kenran.westage.jp


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