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インタビュー & 特集

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INTERVIEW!こまつ座『きらめく星座』田代万里生さん Part2

井上ひさしの「昭和庶民伝三部作」第一作目にあたる『きらめく星座』が、約3年ぶりに上演されます。2014年に、本作で初めてストレートプレイに挑みながらも、怪我のために無念の途中降板となった田代万里生さん。前回と同じメインキャストが揃っての再演にあたり、3年前の思い出を交えながら、改めて作品と向き合う心境を語ってくれました。
(取材・文/千葉玲子、撮影/石沢真実)

INTERVIEW & SPECIAL  2017 9/1 UPDATE

⇒Part1からの続きです。インタビュー前編はコチラ。

人から人へ伝え続けていくこと

――共演者の印象も伺いたいのですが、まず、母・ふじを演じる秋山菜津子さんは田代さんから見てどんな方ですか?
 ふじはけっこう天真爛漫な役ですが、普段の秋山さんは落ち着いてらっしゃって、クールな印象です。それが、芝居が始まると一気に変わるんです。「演じてる」っていう感じがしなくて、スキがなくて、どこを切っても「ふじ」なんです。本当のお母さんみたいに思えてきて、一緒に演じていても不思議な感覚でした。ああ、女優さんだなって。そしたら読売演劇大賞(最優秀女優賞)を受賞されたので、やっぱり!って。それと、降板したあとに僕が皆さんにお手紙を書いたときに、とても丁寧なメールをくださって。「また一緒にこの作品で、このお家で待ってるからね」ってお返事をくださったのが心に残っています。今回またご一緒できるのがすごく嬉しいです。

――みさをの夫・源次郎役の山西惇さんと、小笠原家に間借りしている竹田を演じる木場勝己さんについてはいかがですか?
 山西さんはいろんなことをキッチリ考えていらっしゃる方で、源次郎さんにピッタリですよね。もし山西さんがこの時代に生まれていたら、源次郎さんみたいな人だったんじゃないかと思うくらい(笑)。稽古以外でも、山西さんなのか、源次郎さんなのか、境目がないくらいに感じました。山西さんは、ご自分の考えがしっかりとあったうえで行動される、信念がある方という印象です。
 木場さんは、当時唯一共演したことがある方で(2012年・ミュージカル『Bonnie&Clyde(ボニー&クライド)』)、すごく助けていただきました。僕がストレートプレイも日本人役も初めてだということも知ってくださっていて、しかも木場さんは25年前に正一を演じられたことがあるので、もう、わからないことがあったら、まず木場さんに聞く。っていうところから始まって(笑)。僕が行きづまってると、ふっと隣に来て、「そこ、ちょっと一回セリフ言ってごらん」と声を掛けてくださったりして。たぶん、同じ役を演じていたから気になる部分もたくさんあったでしょうし、親心じゃないですけど、育ててくださったというか、愛情深く接してくださいました。
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――演出の栗山民也さんとは『ピアフ』や『スリル・ミー』でもご一緒されていますが、田代さんから見て栗山さんはどんな方ですか?
 基本、寡黙な方なんですよね。小さい声でぼそっとおっしゃって、考えさせるワードをポン、と置くんですよ。それで僕の反応をずーっと見てる、という感じ。おそらく栗山さんの中には明確なイメージがあって、田代万里生の正一がそこに向かって行けるように、ポン、と何かをくださるんですよね。もちろん質問には答えてくださるんですけど、正解を与えるのではなくて、役者自身に考えさせて、導いてくださる方。本当に核になる言葉だけをおっしゃるので、ムダがない。僕が今までご一緒した演出家の中では一番言葉数が少ないのに、台本への書き込みは一番多いんです。それだけ言われたことに重みがあって、僕にとっては“神の声”のような(笑)、特別な方です。
 栗山さんの著書『演出家の仕事』(岩波新書)を読んで面白かったのは、何かを演出をするときに、まず“音”から考えると書いてあったんです。キャスティングや美術よりも、まず相応しい音は何か、から始まるというのが意外でした。例えばそこにセミの音が必要なのか、ガラス戸を開ける音があったほうがいいのか、音は出さないほうがいいのか、このシーンにはどんな曲が合うかとか、“音”にアンテナを張ってらっしゃるそうなんです。

――声のトーンも含めて?
 声のトーンも、おそらくそうですね。読み合わせでも、セリフの間や声の高さへのリクエストは多いです。それも、論理的に「こういう意図でこう言ってほしい」ではなく、自分で考えるヒントをくださいます。一度、稽古の初めの頃に質問をしたことがあって、その場では答えを消化できなかったんですけど、何度も繰り返していくうちにはまっていく手応えがいろいろとあって、それらが積み重なって約3時間の芝居になっていくような、不思議な感覚がありました。

――この時代の日本人の言葉を話すことに、難しさは感じましたか?
 正直、3年前はわからないことだらけでした。栗山さんや木場さんに一から教えていただくことから始まりましたね。台本を読んでもわからないことがたくさんあって、伝承じゃないですけど、口伝えって必要なんだなと思いました。時代背景とか、当時の日本の写真とか、今回も新たにいろいろな知識を詰め込んではいるんですが、台本や資料だけじゃ伝わらないものが、人から人へ伝わったり、演劇で伝わったり、だからこうして続けていくこと、伝え続けていくことが必要なのかなとも思います。
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――『きらめく星座』は井上ひさしさんが自分で演出をした数少ない作品で(こまつ座旗揚げ翌年の1985年初演時)、その当時演出助手で入っていた栗山さんが今も受け継がれているんですね。それでは田代さんご自身のことも伺いたいのですが、この3年間で、役者として変化を感じたのは?
 やっぱり『エリザベート』のフランツ・ヨーゼフですね。帝国劇場などの大きな劇場で、1年に20万人もの方が観てくださる作品は初めてでしたし、2015年と2016年を合せると150回以上。数をこなしたことで見えてきたものもあったと思います。実在の人物ですし、ミュージカルですが芝居の要素も多い役なので、いろいろと感じるもの、得るものは大きかったです。どちらかというとトートのほうが自由度が高くて表現の幅があるんですけど、フランツは歴史上の人物なので制約がある中で表現しなければいけないので、そこは難しいなと感じましたね。

――『きらめく星座』は「場所」や「居場所」の物語でもあるかと思うんですが、田代さんが好きな場所ってどんなところですか?
 好きな場所?(笑) どこかなあ? 去年、『エリザベート』のつながりでウィーンとザルツブルク、ハンガリーに行ったんですが、すっごく良い旅でした。毎日のようにフランツを演じたことで他人事とは思えない感覚で旅をしたからか、TVでシェーンブルン宮殿の映像を観たとき、自分の田舎が映ったくらいの感覚があって(笑)。第二の故郷じゃないけど(笑)、オーストリアも思い出深い場所になりましたね。それくらい、フランツは僕の中で大きな存在でした。

――最後に、再演ではありますが、こまつ座や『きらめく星座』を観たことがない方も含めて読者へメッセージをお願いします。
 戦争というキーワードが入ってくるんですが、戦いのシーンがあるわけではなく、この舞台で誰かが死ぬわけでもなく、どこにでもある当時の庶民の姿が描かれています。幕開きからカーテンコールまで舞台転換がなく日本家屋の中だけって、ミュージカルではまずありえないし、映画やドラマでもお茶の間だけで完結する作品はなかなかないですよね。それこそ『エリザベート』とは真逆の世界(笑)。畳の上で団扇であおいでるだけのシーンがあったり。でもそうやって、ある一家に寄り添うような何気ないシーンの連続の中で見えてくる、今の日本になるまでの、その当時のエネルギーとか、人々の思いを感じられる作品だと思います。あと、音楽が占める割合が大きいので、僕自身オペラやミュージカルしか観たことがなかった頃は「お芝居って静かで音楽がなくて長くて」ってイメージが実はあったんですが、そうじゃなくて、もっと気軽に観ることができて、実は奥が深い。井上ひさしさんの「むずかしいことをやさしく。やさしいことをふかく。ふかいことをゆかいに。ゆかいなことをまじめに書くこと」を、まさに体現している芝居です。僕の中では井上ひさしさんのベスト・オブ・ベストな作品だと思って取り組んでいますし、こまつ座やストレートプレイを観たことがない方も楽しめる作品ですので、ぜひ観ていただきたいです。
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田代万里生(たしろ・まりお)
1984年生まれ、埼玉県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科テノール専攻卒業。3 歳からピアノを学び、7歳でヴァイオリン、13歳でトランペット、15歳からテノール歌手の父より本格的に声楽を学ぶ。2003年『欲望という名の電車』で本格的にオペラデビュー。その後 09年『マルグリット』でミュージカルデビューを果たす。近年の主な舞台出演作に、『グレート・ギャツビー』『Clementia vol.3』『エリザベート』『スウィーニー・トッド』『CHESS THE MUSICAL』『スリル・ミー』『ラブ・ネバー・ダイ』『エニシング・ゴーズ』『トゥモロー・モーニング』『サンセット大通り』など。第39回菊田一夫演劇賞受賞。

こまつ座第120回公演
『きらめく星座』
[東京公演]2017年11月5日(日)~23日(木・祝)紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(タカシマヤタイムズスクエア南館7階)
[地方公演]2017年11月30日(木)仙南・えずこホール・大ホール
作:井上ひさし
演出:栗山民也
出演:秋山菜津子、山西惇、久保酎吉、田代万里生、木村靖司、後藤浩明、深谷美歩、阿岐之将一、岩男海史、木場勝己

【スペシャルトークショー】
11月7日(火)1:00公演後 秋山菜津子・山西惇・田代万里生・木村靖司・深谷美歩
11月12日(日)1:00公演後 吉原毅(城南信用金庫 顧問)-戦争の足音が聞こえる時代に-
11月16日(木)1:00公演後【井上ひさし誕生日特別トークショー】辻萬長・木場勝己・久保酎吉・後藤浩明
11月21日(火)1:00公演後 いとうせいこう(作家・クリエーター)-「音楽」は「笑い」を連れてくる!-
【同時開催】
『こまつ座のキセキ』
第120回公演を記念して、こまつ座33年間の軌跡が秘蔵の資料とともに展示されます。ほかでは見られない貴重な資料を一挙公開。『きらめく星座』公演期間中、劇場ロビーにて開催。
※詳細はhttp://www.komatsuza.co.jp/をご覧ください。

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