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インタビュー & 特集

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INTERVIEW!こまつ座『イヌの仇討』大谷亮介さん&彩吹真央さん&東 憲司さん

吉良上野介の視点から語られる井上ひさし流“忠臣蔵”『イヌの仇討』が、29年ぶりに上演されます。本番を間近に控え、熱気あふれる稽古場を訪ねて、吉良上野介役の大谷亮介さん、お吟さまを演じる彩吹真央さん、演出の東 憲司さんに心境を語っていただきました。やがて見えてくる “どんな社会になっても揺るがない人間のありよう”とは…?
(取材・文/高橋彩子、撮影/須田卓馬)

INTERVIEW & SPECIAL  2017 7/3 UPDATE

DSC06743――吉良上野介が赤穂浪士達に討ち入られ、妾であるお吟や女中頭のお三、近習たちを連れて物置に隠れるところから始まるこのお芝居。お稽古も佳境に入りつつあるところかと思いますが、いかがですか?
東:やっていくうちに、役者さんご自身のキャラ、そして役としてのキャラが、どんどん出てきています。大谷さんの上野介はますます愛情ある豊かな人物になると同時に、「あれ? この人、少し変わっているな」というような面白みもあって。人間って、緊張が最高潮に達するとおかしなことをやるものですよね。彩吹さんのお吟も、可愛らしいながらも女のエゴが出てきて、とてもチャーミングです。
大谷:狭い物置に逃げて来た人間の中には、優秀な人もいればそうでもない人もいるけれど、とにかくそのメンバーで助け合っていかなきゃいけない。その中での「この人はこうやって行動するんじゃないか」「この人はこうしたいのではないか」といった感情を細かく見ていけばいくほど、人間らしいドラマになる気がするんです。稽古の最初は僕も殿様然としなきゃ、というふうにスタートしましたが、次第に、もっと本質的なものが出てくる。近習三人衆にしても女中たちにしても、それぞれの個性が表れてきています。
彩吹:本当にそうですね。最初は漠然としたイメージだったものが、稽古の中で、周りの皆さんによって具体的になっています。特に大谷さんは、お吟にはご隠居さま(上野介)の妾としてこうしてほしい、といったことを率直に言ってくださるので、とてもありがたいですね。それによって、ご隠居さまが引き立つ部分もあれば、横にいる私の女性らしさ、あるいは東さんがおっしゃったエゴみたいなものもどんどん引き出されていると感じます。

DSC06820_pp――29年ぶりの上演にあたり、東さんが演出として特に重きを置いているところとは?
東:初演はホンができ上がりながらの稽古だったわけですが、今回はすでにホンがありますから責任重大です! でも面白いのは、“忠臣蔵”を通常とは逆の視点から見た、ほかにはない世界だということ。特にほかと違うのは、赤穂浪士が一切登場しない点。だからこそ、赤穂浪士が近くにいるという緊張感を常に漲らせるよう、心がけています。それから、やっぱりどの演出家も「どうしよう」と考えるのは犬だと思うんですよ。忠臣蔵のどの書物を読んでも、ここまで犬が出てくるのは井上さんのホンだけ。タイトルがカタカナの「イヌ」なのもいいですよね。いろいろなものの象徴なのだと思います。権力であり、そこに翻弄される存在であり、ずっと一緒にいる仲間であり……。いわばこの戯曲の11人目の登場人物ですから、どう扱うか、かなり悩みましたね。

――今回の犬は、東さんの手作りだとか。
東:初演はラジコンの犬だったそうで、それも悪くないですし、操り人形だったり等身大の人が着ぐるみを着てやったりという手もあるでしょうが、僕は美術の石井(強司)さんにも相談しながら、パペットにしたんです。俳優が犬を抱くときは、自分の芝居をしながら犬の芝居もしてもらわなければならないのですが、温かみのある生っぽい犬にしたかったのでわがままを言わせてもらって。
大谷:僕は人形劇が好きなんですよ。子供のころは指人形を作ってずっと遊んでいました。あと、公園なんかで時々、おもちゃのリスを上手に動かす人がいるじゃないですか、あれが好きで、よく買って練習していたんです。だから楽しいのですが、あんまり犬を動かし過ぎてもね、ふざけている場合ではないから(笑)。
彩吹:私は犬に触る場面はあまりないんです。お上から賜った大事な犬ですし、ある事件が勃発して皆が触る場面でも、そこまで近づく設定ではないですし。
大谷:お吟は犬が嫌いかもわからないね。
彩吹:ええ、お上が思うほどには大事に思っていない気がします。
大谷:上野介も内心、「かなわんな」と思っているんじゃないかな。ただ、ルールだから絶対に守らなければならないという、役人根性。
東:まさに中間管理職ですよね。権力の最高位にはいないけれど、小さな物置では一応、最高位にある。客席で、「これ、俺だ」とか、「俺の上司だ」と思う人、たくさんいるのではないでしょうか。

DSC06776――その小さな物置の中に、ほとんどの登場人物が出入りもなく居続けるのが、この戯曲の特徴です。
東:現代の設定で、同じような立場の人が10人固まるならどうとでもなるんですが、ここにはお殿様がいて家来がいて、という社会がある。だからたとえば、戸口の近くにはこのお二人は行けません。そういうところが難しいですね。
大谷:本来、殿様というのは入り口から一番遠い方向にいて、入り口と自分の間に家来がいるというスタイルですからね。とはいえ物置の中ですし、客席がありますから、実際のようにはできませんが、そういうことを考えながら、皆のことを見つつ、戸口の向こうの大石(内蔵助)のことも気にして。そんなとき、必ず横にお吟が居てくれて、ドキドキしたら手を握らせてくれたりする。自分が死ぬかわからないときに女の人が一緒にいるというのは、すごく大切なことなんだなあと思いますね。恐怖心が半減するでしょうから。

――戯曲のお吟の説明には「上野介行火(あんか)」とありますよね。そういう言い方があるのでしょうか?
東:いろいろと書物を探しましたが見つからなかったので、井上さんが、ずっと傍にいて冬は温めて夏は蚊を追い払うような女性、という意味で書かれたんだと思います。
彩吹:私は今回がこまつ座初出演で、井上作品を台本として読むのも初めて。たくさんト書きが書かれていて、その通りにやれば役が表現できるようになっているので、まずはできるだけそれに沿ってやりたいと考えています。戯曲を読めば、お吟はまさに行火(あんか)のように存在しているわけですし。でも、さっき大谷さんがおっしゃったように殿が怖がったときには手を握るけれども、一方で、女性だから男性より怖がる部分もあるはずですよね。今はついつい殿を守るほうに気持ちがいってしまい、怖がるのを忘れているときがあるので、そこももっとリアルに感じなければと自分に言い聞かせています。
大谷:でも、やっぱり女の人のほうが強いと思うんだよ。
彩吹:そうですか?
大谷:お三とお吟が言い合いを始めたら、男は絶対にどこか行きたくなるよね。だから、芝居の中で、上野介が聞こえていない振りをしても面白いかもしれない。だって、立ち入れないもの、女の人たちが喧嘩していたら(笑)。
彩吹:(笑)。世の男性と女性、あるいは女性同士の関係性というものが、この小宇宙の中に表現されているのがいいですよね。お三さまとお吟は、ご隠居さまの命を守るか、誉れを守るか、で対立することが多いのですが、気がつけばご隠居さまのことを半ば忘れて女の意地で言い合っているようなところもありそうです。
大谷:真逆な二人だもんね。
東:だけど、両方とも正論なのが、この戯曲の素晴らしいところ。正論で真逆だから、周りは余計に困っちゃうんですよね。どちらにも加担しづらくて。

――そのように価値観の違う人たちが一か所に集まり、最後はひとつの結論に向かっていくのが、この劇の大きな見どころと言えそうです。
大谷:上野介も武士ですから、もう無理だ、逃げられない、と途中で気がつくと思うんですよ。だからといって、「うん、死のう」とは思えずにいる。なぜ大石がこんなことをするのかわからないまま、犬っころのように殺されたくはない。どういう理由なのか納得して死にたい。それを推理していき、最後、「よし。だったらこうやって死んでやる」ということを選ぶんです。
彩吹:お吟も同じように、ご隠居さまが討ち入られる理由がわからないし、「何が何でもこの方を最後までお守りするのだ」と考えている。だけど、誰もが知っている通り、赤穂側から見て仇討ちが成功するのは、変えられない歴史の真実ですよね。それでも、登場人物たちの中で最後まで、殿に「生きていてくださいまし」と言うのがお吟なのですが、結局は殿の姿や言葉などを受け止めて、自分も納得していく。2時間の中でお吟が変わっていき、人間として成長するさまを、丁寧に表現したいですね。
大谷:現代では皆、脳みそで考えるという意識で生きていますが、江戸時代のこの人たちは頭ではなくお腹で考えていたと思うんですよ。「腑に落ちる」という言葉にしてもそういうことですよね。井上先生の言葉はとても論理的ですが、それを演じる側が頭で考えて喋ると、もう論理しか出てこなくなってしまう。論理のぶつかり合いなのだけれども、登場人物を突き動かしてその論理を言わせている腹の部分に、どんな社会になっても揺るがない人間のありようみたいなものがあって、それが、立場や時代設定に応じた論理となって顕われるのではないでしょうか。
東:お客さんにはぜひ、井上ひさし流“忠臣蔵”の真相が、どれだけの犠牲と勇気ある決断であったかということを見ていただきたい。その真相は、ほかのどの忠臣蔵にも描かれていません。吉良が失ったのは命だけではない。そこをどうか、見届けてほしいですね。

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大谷亮介(おおたに・りょうすけ)
ファザーズコーポレーション所属。1986年「役者集団東京壱組」を旗揚げし、座長として活躍。解散後、「劇団壱組印」を旗揚げし、三軒茶屋婦人会にも参加。舞台演出も多数手掛ける。近年の主な出演作品に【舞台】『エドワード二世』(演出:森新太郎)『海をゆく者』(演出:栗山民也)『TRIBES』(演出:熊林弘高)『桜の園』(演出:鵜山 仁)『乱鶯』(演出:いのうえひでのり)『八百屋のお告げ』(演出:木野 花)【映画】『任侠野郎』(監督:徳永清孝)【テレビ】『歴史ミステリー日本の城見聞録』(レギュラー、BS朝日)『最高のオヤコ』(TBS)『お義父さんと呼ばせて』(CX)『未解決事件・ロッキード事件』(NHK)テレビ『緊急取調室』(テレビ朝日)など。今回こまつ座初出演となる。

彩吹真央(あやぶき・まお)
グランアーツ所属。1994年に宝塚歌劇団に入団。繊細な演技力とのびやかな歌声を持つ男役スターとして活躍。2010年に宝塚歌劇団を退団。現在、コンサートなどの歌手活動や声優などさまざまなジャンルにも積極的に挑戦している。近年の主な出演作品に【舞台】『ロコヘのバラード』(演出:小林 香)『サンセット大通り』(演出:鈴木裕美)『シラノ』『ウェディング・シンガー』『モンテ・クリスト伯』(演出:山田和也)『アドルフに告ぐ』(演出:栗山民也)『End of the RAINBOW』(演出:上田一豪)『オフェリアと影の一座』(演出:小野寺修二)など。今回、こまつ座初出演となる。

東 憲司(ひがし・けんじ)
1999年秋「劇団桟敷童子」を旗揚げ。劇団代表、演出と劇作(劇団公演チラシ記載名、作サジキドウジ)を手がける。『しゃんしゃん影法師』(2004年)、『風来坊雷神屋敷』(05年)、『海猫街』(06年)は、3年連続で岸田國士戯曲賞の最終候補になるなど、劇作家としても高い評価を受けている。外部作品も積極的に手がけ、07年2月には初の海外、韓国チョンミソ劇場にて『骨唄』を演出し成功を収めた。06年3月日本劇作家理事に就任。『海猫街』(06年)で第61回文化庁芸術祭最優秀賞(関東の部)を受賞。12年には、桟敷童子『泳ぐ機関車』で第47回紀伊國屋演劇賞個人賞、第20回読売演劇大賞優秀演出家賞、第16回鶴屋南北戯曲賞を受賞。14年、15年に日本民間放送連盟賞優秀賞を2年連続受賞。また、14年には第30回全日本テレビ番組製作社連盟ATP賞奨励賞、第51回放送批評懇談ギャラクシー賞奨励賞を受賞。15年、第41回博多町人文化勲章受章。近年の主な作品に桟敷童子『夏に死す』『砦』『透明な血』など。こまつ座では15年に『東憲司版 戯作者銘々伝』(作・演出)で初参加。今作が初めての井上戯曲の演出となる。

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山形新聞・山形放送 後援
こまつ座第118回公演
『イヌの仇討』
[東京公演]2017年7月5日(水)~7月23日(日)紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(タカシマヤタイムズスクエア南館7階)
[山形公演]2017年8月4日(金)川西町フレンドリープラザ、8月6日(日)酒田市民会館 希望ホール
作:井上ひさし
演出:東 憲司(劇団桟敷童子)
出演:大谷亮介、彩吹真央、久保酎吉、植本純米、加治将樹、石原由宇、大手 忍、尾身美詞、木村靖司、三田和代

【公演イベント】
◆スペシャルトークショー
7月7日(金)昼終演後:東憲司
7月9日(日)昼終演後:大谷亮介 彩吹真央 久保酎吉 植本純米 加治将樹 
7月13日(木)昼終演後:角屋由美子(米沢市上杉博物館学芸主査)「『忠臣蔵』異聞?…吉良家の言い分」 
7月16日(日)昼終演後:大谷亮介 彩吹真央 植本純米 木村靖司 三田和代
7月17日(月・祝)昼終演後:名越康文(精神科医)「殿、ご乱心は本当か」
◆7月12日(水)昼夜両回:井上ひさしの言葉付き、「夜中の電話」クリアファイルプレゼント
◆7月13日(木)13:30公演ご来場者スペシャルプレゼント
山形県米沢市のご厚意により、対象公演にご来場の方全員に、【米沢牛入りさらみ】をプレゼント!
さらに、当日同封のアンケートにご回答の方の中から抽選で5名様に【米沢牛】をプレゼント!
当日終演後には、米沢市上杉博物館 学芸主査・角屋由美子さんのアフタートークショーも。

※詳細はhttp://www.komatsuza.co.jp/をご覧ください。

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