インタビュー & 特集
INTERVIEW! 『ピーターパン』吉野圭吾さん
今年36年目を迎えるブロードウェイミュージカル『ピーターパン』に、フック船長役で吉野圭吾さんが初参戦。クセのある役柄が印象的な吉野さんが、ときに客席から笑いも起こる悪役をダンサブルにダイナミックに演じます。“子どもの心”がポイントということで、“なぜかいつも子どもが寄ってくる”といったお話まで、色々と語ってくれました。(取材・文/小野寺亜紀、撮影/大東佐和子)
INTERVIEW & SPECIAL 2016 7/16 UPDATE
『ピーターパン』が世界で初めて上演されたのは1904年のロンドン。ブロードウェイでは1954年、ジェローム・ロビンスの演出・振付によりミュージカル化され、その後もリヴァイバル版がいく度も上演されています。日本では今夏上演36年目に突入。2014年には、数々のミュージカルやショー作品を手掛け、タップダンサーとしても活躍する玉野和紀さんの手により生まれ変わりました。吉野さんと玉野さんは『CLUB SEVEN』シリーズでも長年共演してきた間柄です。
「フック船長のお話を頂いた時は、“ヤッター! とうとう来たか!”という感じでした。歴史ある作品に出演できて嬉しいです。10年以上前にこの舞台を観た時、とても芸達者な方がコミカルにフック船長を演じていて、こういう役ができたらいいなと思っていました。玉野さんは話し合いながら一緒に作っていける演出家さんなので、自分の意見もバンバン伝えて、過去にこだわらず新しいものを作れたらと思います」
『CLUB SEVEN』シリーズではダンスシーンでも大活躍。常に全力投球で、稽古入りは誰よりも早いと評判の吉野さん。本作でもダンスの見せ場があり楽しみです。
「みんな僕のことを“全力すぎる”“熱すぎる”って言うんですよ(笑)。稽古場に一番に入るのは、誰よりもいっぱい稽古をしないとだめだから。この役も全力投球で臨みますよ。歌のシーンもそうですが、ダンスも気持ちの延長で“踊っちゃう、こんな振りができちゃう”というように見せたいです。それがミュージカルの面白さであり、素敵な部分だと思うので」
海賊を率いてピーターパンと戦うフック船長ですが、ウェンディに母親役を求め連れ去ったり、ワニが苦手という面があったり、どこか憎めない悪役キャラです。
「すごく寂しがり屋な気がします。ネバーランドではみんなお母さんがいないんですよね。結局このお話は“目が覚めたら夢だった”というのではなく、実際に子どもたちがピーターパンとネバーランドへ行って帰って来るお話なので、単なる夢物語でない部分はしっかり踏まえて演じたいです。ネバーランドには大人になりたくない子どもたちやピーターパンがいて、そこの住人はみんな子どもなんだと思います。フック船長も大人になりきれない大人、いつまでも遊んでいたいというそんなフックでありたいです。子どもの心で楽しめたらと思います」
フック船長を演じるうえでポイントとなる“子どもの心”。実際に吉野さん自身も“子どもの心”を持っていると感じることはあるのでしょうか……。
「ウーン、どうかな(苦笑)。でも子どもと一緒に身体を使って遊ぶのは好きですね。うちの実家が保育園を経営していたんですよ。だから子どもたちと一緒にお絵描きをしたり遊ぶ機会は多かった。『1789』に出演しているときも舞台裏で子役の子とね……! 僕稽古場での居方も結構怖くて、本番ではあのメイクだし誰も寄せ付けない感じのはずなのに、子どもが結構寄ってくるんですよ。どんどん俺の固い扉をコンコンとノックしてくる(笑)。子どもを寄せ付ける何かがあるんでしょうか!? まあ、子どもには(本性が)バレているということですね」
フック船長役と共にもうひとつ演じる役が、ウェンディたちの父親であるダーリング氏。この役は動きといい表情といい、子どもたちの笑いを誘う楽しい役どころでもあります。
「笑いは僕にとってスパイス。役柄を背負ったうえで、笑いが必要なシーンは計画的に考えてやっていることが多いです。アドリブは結構弱いんですよ。稽古場からちゃんと練って試して、ようやく舞台の上へ持っていくことが多いです。結構子どもたちは目で見たものを素直に笑うじゃないですか。だからきっと何かやると思います! ダーリング氏については、台本を読むと『静かにしなさい、少し静かに』という口癖が彼にある。その口癖はフック船長でも残っているので、その点についてももっと考えていきたいです」
劇中でピーターパンと戦うシーンでは、客席からフック船長に「どこかへ行って!」と声が上がることも。
「心を強く持たないと、台詞を忘れそうで怖いですね(笑)。でもそう言われることが正解だと思う。子どもたちがちゃんとお話に入り込めているのだから。やっぱりフック船長がしっかり悪役でないとピーターパンが浮き立たないので。ピーターパン役の(唯月)ふうかさんとは初共演ですが、若いのに真面目でしっかりしているので頼りになりますし、戦いも楽しんで演じたいですね」
クセのある色濃い役柄が巧い吉野さん。今年『1789 -バスティーユの恋人たち-』でも、「私は神だ!」と言い放つシャルル・アルトワ伯を演じ切りました。
「アルトワ伯は媚薬や催眠術を使って人を操るちょっとせこい役で、いわゆる変態です(笑)。『私は神だ』というところに役の照準をさだめ、“それを言えてしまう人はどういう人なのか”、というところから役を埋めていきました。僕はヒーローキャラじゃないですし、やはり演じたいのはヒーローより悪役ですね。犬とか妖怪とか人間じゃない役も演じてみたいです(笑)」
【プロフィール】
吉野圭吾(よしの・けいご)
1971年3月1日生まれ、東京都出身。劇団四季研究所を経て、’91年~’96年まで音楽座に在籍し数々の舞台に出演。音楽座解散後は多彩な役柄で、ミュージカルを中心に活躍している。主な出演作は『モーツァルト!』エマヌエル・シカネーダー役、『ジキル&ハイド』アターソン役、『レベッカ』ファヴェル役、『ダンス・オブ・ヴァンパイア』ヘルベルト役など。独特の色気や妖しい存在感で、ミュージカル界に欠かせない名プレイヤー。『宝塚BOYS』『傾く首~モディリアーニの折れた絵筆~』で第34回菊田一夫演劇賞受賞。今後ミュージカル『バイオハザード -ヴォイス・オブ・ガイア-』に出演
ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』
原作:ジェームズ・M・バリ
作詞:キャロリン・リー
作曲:ムース・チャーラップ
演出・振付・上演台本:玉野和紀
出演:唯月ふうか、吉野圭吾、入来茉里・片山陽加(Wキャスト)、舞羽美海 他
◆東京公演
7月24日(日)~8月3日(水) 東京国際フォーラム ホールC
ドリームシート(大人・子ども同一料金)8,000円<SOLD OUT>、S席大人8,500円・S席子ども(3~12歳)5,500円、A席(3階席)3,500円(大人・子ども同一料金)
お問合せ:ホリプロチケットセンター 03-3490-4949
HP http://hpot.jp/stage/peterpan-2016
◆大阪公演
8月17日(水)11:00~・15:30~ 梅田芸術劇場メインホール
ドリームシート(大人・子ども同一料金)8,000円<SOLD OUT>、S席大人8,500円・S席子ども(3~12歳)5,500円、A席(3階席)3,500円(大人・子ども同一料金)
お問合せ:梅田芸術劇場メインホール 06-6377-3800
HP http://www.umegei.com/schedule/538/