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mag5連動企画 城田優さん初演出『アップル・ツリー』舞台レポート

絶賛上演中、城田優さん初演出のミュージカル『アップル・ツリー』。『omoshii mag vol.5』で、城田優さん&加藤和樹さんの対談を担当してくれた武田吏都さんによる舞台レポートをお届けします。

INTERVIEW & SPECIAL  2016 6/6 UPDATE

作品というのは生み出したその人自身なのだと、城田優初演出舞台「アップル・ツリー」を観て改めて感じた。熟れていないリンゴを齧ったような青く爽やかな後味を残すこの作品は、たまらなくピュアでチャーミング。これらの形容はそのまま、筆者が城田本人に抱いている印象に通じる。

 ミュージカル「アップル・ツリー」は1966年にブロードウェイで誕生し、日本では1978年に劇団薔薇座で初演(戸田恵子らが出演)。真矢みき(現・真矢ミキ)主演で、宝塚花組でも上演されている。休憩を挟まない3話オムニバスで、「アダムとイヴの日記」「女か虎か」「パッショネラ」という設定も登場人物も全く異なる3本がキャスト7名のみで展開。共通するのは欲望に絡む男女の物語ということだろうか。“禁断の木の実=リンゴ”は最初の「アダムとイヴの日記」にしか登場しないが、エデンの園でリンゴを口にしてしまったことから無垢を失った人間、その子孫たちの姿が、ピアノとチェロのみのシンプルな生演奏に乗せて描かれる。登場人物は愚かしくも愛おしく、どれも皆、演出家・城田の優しい眼差しをたっぷりと注がれて世に生み出されたキャラクターたちだ。

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 1本目の「アダムとイヴの日記」は、岸祐二のアダムと和田清香のイヴが中心。白い布を巻きつけたような衣裳に、中央奥にリンゴの木が見えるごくごくシンプルなセット。演出家・城田優の第一歩は、本当にまっさらな空間からスタートした。どんなものにも名前がついておらず、自分の感情の変化にも戸惑うばかりの素朴なアダムが、グイグイと積極的で姉さん女房的なイヴと出会い、結ばれ、家庭を持つ。そして“愛”の意味をわかりかけた頃にイヴを失うまでが、衒わない表現で真っ直ぐに描かれる。素直な演技と伸びやかな歌声の和田がいい。言ってみれば観客全員が“イヴの子”であるわけだが、万人の母たる包容力を感じた。

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 続く「女か虎か」では、とある未開の王国へと場所が一変。王女バーバラ(豊原江理佳)と禁断の恋に落ちたサンジャー大佐(上野哲也)が、その罪により闘技場へと送り込まれる。そこには2つの扉があり、それぞれ美女と虎が控えている。美女と婚礼を挙げて幸せに暮らすか、虎に食い殺されるかの究極の選択を、囚人自身が行う仕組みだ。立ち会っている王女はどちらの扉に何があるかを知っている。そして自分の中に、扉の向こうに控える侍女ナジーラ(関谷春子)に対する青白い炎がメラメラと燃えていることも。王女は愛する男の生死の境に際し、どんな選択をするのか? 物語は、サンジャーが扉に手をかけたところで終わる。このパートは、音楽やビジュアルが情熱的。バーバラの赤毛と内に燃え盛る炎に呼応するような、全面真っ赤の照明が多用されていた。楽曲も熱く歌い上げるナンバーが多く、上野哲也や杉浦奎介の厚みのある男声が雄々しく響き渡る。

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 前パートで愛と欲望の複雑なバリエーションを突きつけられた後、最終章の「パッショネラ」はまたガラッと様変わりして、おとぎ話のように始まる。現代のNYで映画スターになる夢を見ながら煙突掃除の仕事をしている少女エラ(小山侑紀)は、あるとき魔法により、映画スター“パッショネラ”に変身。ある時間になると魔法が解ける設定といい、まさにシンデレラだ。ロックスターのフィリップ(上野哲也)らと出会い、憧れていた富と名声を手に入れた彼女だが、その心は“ありのままの私”や“真実の愛”を求めてさまよう。そんな彼女が最後に見つけ出したものは? 誰もが気持ちよく家路につけるであろう、ほっこりとした結末。これもまた、取材で城田と会って対話した後に残る感覚に似ているような気がする。

 開幕前に行った「omoshii mag」vol.5のインタビュー(加藤和樹との対談)で城田は本作を「すごく小さな劇場での小さな一歩ではあるけれど、その戦いの一歩を踏み出していると思っています」と語っていた。“その戦い”とは、城田の中での「ミュージカルとはこうあるべき」という思いを、いかに純度高く作品化して世に送り出せるかということ。例えばキャスト。今回の6名(城田が信頼を寄せ、オファーした岸以外)は、完全に実力重視のフェアなオーディションで城田自身が選んだ。特に重視したのは歌唱力。そう豪語するだけあって、まさに「ミュージカルとはこうあるべき」のノンストレスな状態で、最初から最後まで堪能することができた(……本来これが当然の形なのだ)。また、城田の選考基準に知名度は含まれなかった。実際、今回とても印象に残った和田清香、小山侑紀、杉浦奎介の名を筆者はいずれも認識しておらず(出演作を観たことはあっても)、観劇後すぐにネット検索したほど。勉強不足を詫びるとともに、出会わせてくれた演出家に感謝した。彼らのように大きなチャンスを与えれば輝く逸材が、きっとまだまだ潜んでいる。
 前出のインタビューで「今後も演出は続けるのか?」と問うと、「『俺の作品、面白くないな』と思ったら、スパッと辞めます。向いてないことをやるのは時間のムダだから」と、少しの躊躇もなく言い切った城田。であれば、この先もきっと城田の演出作が観られるはず。ゲネプロ観劇中、演出席にいる城田の横顔を眺められる位置にいたのだが、時にキャストの演技に柔らかく微笑み、時に音楽にノッて頭を小刻みに振りながらという、演出家としての表情も実に魅力的だった。ちなみに、ゲネプロが始まると演出席のライトは消すべきなのだが、彼はしばらくつけっ放しで、スタッフの注意で「あ!」という感じで消灯するという初々しい姿も目撃。舞台上の堂々たる姿とは違い、“演出家・城田優”は、言ってみればピカピカの一年生だ。個人的な思いだが、上手さや余韻といったテクを身につけるのはまだ先でいい。日本のミュージカル界にフレッシュな直球の一石を投じる存在としての活躍を願っているし、そんな演出家の誕生を心から歓迎する。

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