インタビュー & 特集
INTERVIEW!『ブラック メリーポピンズ』小西遼生さん&良知真次さん&上山竜治さん
韓国発の心理スリラーミュージカル『ブラック メリーポピンズ』が待望の再演。1920年代初頭、ドイツ。ある心理学者の豪邸で火事が起きた。心理学者の4人の養子たち、ハンス、ヘルマン、アンナ、ヨナスは家庭教師メリーによって助け出される。しかし、直後にメリーは失踪。4人はその出来事の記憶をすべて失った。12年後、ある手帳をきっかけに4人は闇に葬られた過去の扉を明ける……。メリー役は日本版オリジナルキャストの一路真輝さんが続投、新たなアンナ役に初舞台の中川翔子さんを迎えての上演。初演から引き続いて出演する小西遼生さん(ハンス役)、良知真次さん(ヨナス役)、上山竜治さん(ヘルマン役)に意気込みをお聞きしました。(取材・文/大原薫、撮影/熊谷仁男、スタイリング/森宗大輔(小西)、ヘアメイク/岩井マミ)
INTERVIEW & SPECIAL 2016 4/10 UPDATE
――再演と聞いてどう思われましたか?
(良知さんと上山さんが小西さんを見つめる)
小西 ……答える気がないな、二人とも(笑)。
良知 いや、やっぱりお兄さんからかなと思って(笑)。
上山 どうですか?
小西 喜び半分、この二人の扱いに面倒くささ半分ですよ(笑)。僕は再演って苦手なほうなのですが、この作品は素直にもう一度やりたいと思える楽しみな作品です。
上山 本当?(笑)
小西 まあ、僕ら3人のことは置いておいて(笑)、前回は稽古から本番まで、ぎゅっと凝縮した時間が過ごせたので。4人の兄妹とメリーだけが存在する話で、やりがいもあるし、音楽も切なくて美しい旋律だし。(演出の)鈴木裕美さん、(脚本の)田村(孝裕)さん、(振付の)小野寺(修二)さんという素晴らしいメンバーで、またできるのが本当に楽しみ。
上山 僕はもう正直に言うと、「ええっ、もう一度やるの?」と。いや、前回は相当大変だったんですよ。舞台上にずっとい続けるし、ずっと叫び続けるし。
良知 いや、あなたはそんなに叫んでないでしょう(笑)。
小西 ヘルマンはほんのりとした恋愛担当だったしね。
上山 過去の秘密を知りたいハンスと知りたくないヨナスの間で、ヘルマンは気持ちをかき乱されていくので、大変な役だったなって。もう一度やるにあたっては、覚悟して臨まなければいけない。緊張感がすごくありますね。
良知 確かに緊張感はあるね。
小西 皆、ずっと試練の中にいるものね。ヘルマンは知りたいけど知りたくないと揺れ動いているし、ヨナスはパニックだし、拉致されるし。
良知 ハンスに「(ヨナスを)拉致してきた」というセリフがあるんですが、初日、笑いが起きたよね(笑)。
小西 初日だけじゃないよ。毎日どれだけいじられたか(笑)。もう、「良知」って名前を恨んだよ。
良知 ハハハ(笑)。『ブラック メリーポピンズ』は韓国発のミュージカルだけれど、日本版の上演台本と演出とで、いわば「日本オリジナル」を作ってきたと思います。1回目に結果を残すことができたからこそ再演が実現したわけだから、役者としてはとても幸せに思うし、よりパワーアップしていないと初演に負けてしまうというプレッシャーもありますね。でも、裕美さんの演出は絶対に前をなぞらないので、再演はすごく楽しみです。
上山 と、上山が言っていたと書いておいてください(笑)。良知君がすべてうまくまとめてくれたので。
小西 久しぶりに会うけど、竜治の面倒くさいところは変わってないね(笑)。
――2年ぶりの再演とは思えないくらい、3人の兄弟感覚は健在ですね。
小西 三者三様ですよね。だから、この作品の兄弟関係がある意味リアルなんです。
――初演からの2年間でのいろいろな経験を経て、再びこの作品に取り組むのはいかがですか?
小西 この作品は、役柄として相手が投げたものにどうリアクションしていくか、演技のキャッチボールが面白い作品なんです。皆も2年の間で何かしらの変化があっただろうし、楽しみだなと思いますね。
上山 僕はこれほど感情をあらわにして歌うということが今までなかったんですよ。歌に気持ちを乗せる難しさを『ブラック~』で改めて知り、その後、『レ・ミゼラブル』で、歌に乗った気持ちを開放して、芝居として表現するということをみっちりやらせていただいた。今回、その経験も生かしていけたらなと思います。
良知 『ブラック~』初演で韓国ミュージカルに挑戦させてもらって、韓国の楽曲の難しさを知りました。その後、小西君と一緒に『シャーロック ホームズ2~ブラッディ・ゲーム~』に出演しましたが、韓国の楽曲は日本と同じアジア圏のせいか、感情をそのまま乗せやすいなということも改めて感じたんです。だから『シャーロック~』を経てまた『ブラック~』に戻って来ることができたのは嬉しいですね。
――今回は、アンナ役が初演の音月桂さんから中川翔子さんに代わりますね。
上山 兄妹の関係性も初演とは全然違うでしょうね。
良知 同じ作品とは思えないくらい、変わりそう。
小西 アンナはストーリーの最初に一つの謎を運んでくる人だからね。竜治はアンナとデュエットもあるし。
上山 アンナは光と影の部分を持った役。皆のアイドルであり、繊細で影もある役だから、中川さんはそういうイメージにぴったりなんじゃないかなと思います。
――今回の見どころは?
上山 もう1回台本を読み直してみると、「開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまった」みたいな感覚があったんです。この物語の子供たちが過去の事件の記憶をたどる気持ちと、自分の記憶をたどる気持ちが同化したというか。お客様にも見てはいけないものを見るような気持ちで、来ていただきたいなと思いますね。前回ご覧になった方も二度楽しめる作品なので、「ああ、あの事件があるからこういう芝居をしていたんだ」と細かいところまで楽しんでいただけると思います。
良知 今、竜治がパンドラの箱と言ったけど、本当にそう。これは開けてはいけない記憶の蓋をもう1回開けてしまうお話。初演で1回開けて閉めた箱を、再演でもう1回開けることになるんです。裕美さんも仰ってましたけれど、シリアスなテーマをアート的ではなくエンターテイメント的に見せているんですね。皆さんが観終わった後どう思われるかはわからないけれど、普通のミュージカルとは違う気持ちを持ってもらえるんじゃないかなと思いますね。
小西 海外ミュージカルはブロードウェイやウィーンなどいろいろあるけれど、韓国ミュージカルの『ブラック~』は総合力が高いなと思いますね。最初に直訳した台本を読んだときは、パッションやエネルギーの高さで押してくる作品かなと思ったんです。でも、田村さんの上演台本で裕美さんが演出されることで、“心理スリラーミュージカル”として、心理の部分をしっかり作ってもらいました。稽古場でも、兄妹のやり取りをいかに生きたものとしてとらえられるかという愚直な稽古を重ねていったんです。キャストとスタッフの力が凝縮して、これは本当に面白い作品になったなと終わった後に思いました。だから、今回も再演という気持ちではなく、全員で気持ちをぶつけ合って、新たな『ブラック~』を作っていけたらなと思います。だからこの作品、観る価値ありですよ!
小西遼生(こにし・りょうせい)
1982年生まれ、東京都出身。2005 年、特撮 TV ドラマ『牙狼<GARO>』に主演しデビュー。2007 年からミュージカル 『レ・ミゼラブル』でマリウス役を演じて脚光を浴びる。以来、舞台をはじめテレビや映画などでも活躍。近年の主な出演作品に『スリル・ミー』『十二夜』『シャーロック ホームズ2〜ブラッディ・ゲーム~』『End of the RAINBOW』『ダブリンの鐘つきカビ人間』など多数。2017年1月には日生劇場にて『フランケンシュタイン』のアンリ役も決定している。
良知真次(らち・しんじ)
1983年生まれ、東京都出身。15歳でデビューし芸能活動を開始。2004年からは劇団四季に在籍し数々の舞台に出演。退団後は舞台だけでなくテレビ、映画、アーティスト活動(2013年にメジャーデビュー)、振付など幅広く活躍中。近年の主な出演作品に、舞台『幕末Rock』『シャーロック ホームズ2~ブラッディ・ゲーム~』『ライムライト』『ダンス オブ ヴァンパイア』『さよならソルシエ』、テレビ朝日金曜ナイトドラマ『都市伝説の女』、映画『タイガーマスク』など多数。
上山竜治(かみやま・りゅうじ)
1986年生まれ、東京都出身。2001 年に男性ユニット「RUN&GUN」のリーダーとしてデビュー(2014 年8月卒業)。その後、殺陣、ダンス、歌を武器に映画、ドラマで活躍。2004年の舞台『イントゥ ザ ウッズ』以降、ミュージカルから小劇場まで数多くの舞台に出演。近年の主な出演作品に、ドラマ『信長協奏曲』(CX)、舞台『冒険者たち』『宝塚BOYS』『メリリー・ウィー・ロール・アロング』『Paco~パコと魔法の絵本』『レ・ミゼラブル』『花より男子 The Musical』など多数。
ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』
5月14日(土)~29日(日)世田谷パブリックシアター
6月3日(金)~5日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
6月9日(木)福岡市民会館
6月17日(金)愛知県芸術劇場 大ホール
作・歌詞・音楽:ソ ユンミ
演出:鈴木裕美
上演台本:田村孝裕
訳詞:高橋亜子
出演:中川翔子、小西遼生、良知真次、上山竜治、一路真輝
※詳細はhttp://m-bmp2.com/をご覧ください。