インタビュー & 特集

SPECIAL! 『オーファンズ』公演レポート

柳下大さん、平埜生成さん、高橋和也さんの3人芝居、舞台『オーファンズ』が2月10日より上演中。閉ざされた部屋で暮らす兄弟と、二人が誘拐した男が繰り広げる緊密な会話劇です。この舞台の公演レポートが届きました!

INTERVIEW & SPECIAL 2016 2/19 UPDATE

東京芸術劇場シアターウエストにて上演中の舞台『オーファンズ』が、口コミで大変話題となっている。

「大切な人を思い出し涙が止まらなくなった」

ラストシーンの衝撃と役者たちの演技の評判が高い作品とあって、客席は男女問わず幅広い年齢層の観客で埋め尽くされている。この日(2月17日)はキャストの一人、平埜生成の誕生日とあって特に若い女性の姿が多く見受けられた。

1983年に初めてロスアンゼルスで上演され、映画にもなったこの作品。日本でも市村正親、椎名桔平、根津甚八などの名だたる俳優たちによって演じられ、いまだ色あせることなく世界中で上演され続けている名作である。

アメリカ・フィラデルフィアにある古びたアパートメントに暮らす、孤児の兄弟・トリートとフィリップ。2人と、あることから一緒に住むようになった謎の男性・ハロルドの3人による再生と絆の物語。

主演は俳優集団D-BOYSの柳下 大。近年『真田十勇士』(宮田慶子演出)、『いつも心に太陽を』(岡村俊一演出)などに出演し、舞台俳優としての評価を着実に高めている。今回、宮田慶子に演出を直々に依頼し、「この作品のラストを観たいと思った」という理由で作品選びにも携わったと話す。
柳下演じるトリートの弟・フィリップ役に、劇団プレステージの平埜生成。蜷川幸雄演出『ロミオとジュリエット』の演技で注目を浴び、今年9月には『DISGRACED』(栗山民也演出)に出演が決定している、今後が期待される逸材だ。
ハロルドは映画『そこのみにて光輝く』ほか、様々な舞台での好演が光る高橋和也が演じる。次なる作品に『御宿かわせみ』(G2演出)、『紙屋町さくらホテル』(鵜山仁演出)が控えている。

薄暗く散らかった部屋に一人、TV番組をじっと見入るフィリップ(平埜)。
そこへ盗品を手に、慌てた様子のトリート(柳下)が帰ってくる。
兄弟ふたりきり、変わらない生活。

ある日、トリートはバーで出会ったハロルド(高橋)を家へと招き入れる。
ハロルドは孤児院での思い出を語りながら、眠りに落ちてしまう。
彼の手荷物から実業家と思いこんだトリートは誘拐を企てロープで縛りあげ、フィリップに見張りを命じると、また一人出掛けて行った。しかしながらトリートの計画は失敗、帰宅すると声高らかに歌い我が家のようにふるまうハロルドが。
苛立つトリートを意に介さず、ハロルドは穏やかに問いかける。
「私のところで働かないか?私たちはきっとうまくいく」
そしてハロルドと3人の生活が始まる。
教養とお金を与えられ、トリートは人とのつながりを学び、フィリップは外の世界を知るようになる。
いつしか互いに寄り添い、温もりを分かち合う存在になっていくが……。

柳下は凶暴性をもって、自分の弱さを必死に守ろうとするトリートをデリケートに表現。不器用なまでに弟を想う温かさを時折垣間見せつつ、ハロルドによって変わっていくことを受け入れられない、微妙な心の機微を実に丁寧に演じている。
平埜は、フィリップを等身大でみせている。粗暴な兄におびえながらも、幼き時に亡くした母の記憶を胸に生きる、ひたむきで純真な少年を好演。抑圧されてきた彼が自由をつかんでいく様をいきいきと演じ、観る者を惹きつける。
ハロルドを演じる高橋は、まさにはまり役といえる。豪放で愛きょうあるキャラクターとともに、父性をもって二人を包み込む姿は高橋自身にも通じるものがあり、優しさをにじませている。

3人のやり取りに笑っているうちに、やがてはそれぞれの心情の変化に共感し、“奇跡の出会い”が描かれた濃密な会話劇に強く惹きこまれていく。
ラストシーンは心の奥底に重く静かに響いてくる。
無性に誰かに会いたくなる、そんな余韻を残す作品である。
翻訳劇に定評がある作・演出家の谷賢一の翻訳により、新しい作品に生まれ変わっており、宮田の細やかな演出も随所で生きている。
何より柳下、平埜、高橋の3人が素晴らしい。
“人はふとしたきっかけでこんなにも変わることが出来る”。
真に迫った役者たちの熱演をじっくり堪能するにふさわしい作品である。

 

 公演に先立ち行った柳下大さんと瀬戸康史さんの対談を下記にてお読みいただけます。
INTERVIEW!『オーファンズ』特別対談 柳下大さん&瀬戸康史さん

<公演情報>

『オーファンズ』

[東京]2月10日(水)~2月21日(日) 東京芸術劇場 シアターウエスト
[兵庫]2月27日(土)〜2月28日(日)  新神戸オリエンタル劇場
翻訳:谷 賢一
演出:宮田慶子
出演:柳下 大 平埜生成 高橋和也
料金:
東京公演… S席6,800円(全席指定・税込) 高校生以下  4,000円(全席指定・税込)
兵庫公演… S席6,800円(全席指定・税込) A席5,800円(全席指定・税込)
※東京・兵庫両公演とも、未就学児入場不可
※当日券販売あり
お問い合わせ:ワタナベエンターテインメント 03-5410-1885 (平日11:00~18:00)
オフィシャルHP:  http://orphans.westage.jp/

<アフタートークスケジュール>

《兵庫公演》
出演者とともに、終演後も「オーファンズ」の世界をお楽しみください。
■2月27日(土)13:00公演
柳下大×平埜生成×高橋和也×宮田慶子
■2月27日(土)18:00公演
柳下大×平埜生成×高橋和也


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