インタビュー & 特集

INTERVIEW!『オーファンズ』特別対談 柳下大さん&瀬戸康史さん

閉ざされた世界に暮らす孤児の兄弟が一人の男性と出会い、絆を再生させていく物語『オーファンズ』。柳下大さんが兄、トリート役で緊密な会話劇に挑戦します。
『オーファンズ』に期待を寄せるのは、柳下さんと同じく俳優集団D-BOYSの「盟友」、瀬戸康史さん。一昨年瀬戸さんが演じた『マーキュリー・ファー』と『オーファンズ』の共通点や作品への意気込み、さらには演劇について、二人が熱く語ります!(文/大原薫、撮影/笹井タカマサ)

INTERVIEW & SPECIAL 2016 2/4 UPDATE

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――お二人の共通点は、果敢に舞台に挑戦されていることかなと思います。
柳下 瀬戸が難しい舞台をやり始めたのは、わりと最近かな? それまではDステがメインだったから。
瀬戸 そう、阿部サダヲさんとご一緒した『八犬伝』が3年前で、それが外部の作品では初めて。映像では経験できないことが舞台ではできるので、1年か1年半に1回は舞台をやりたいというスタンスでいるんです。

――お互いの舞台での印象は?
瀬戸 輝いてるなと思いますね。大とは10年くらいの付き合いなんですが、若い頃からいろんな現場でもまれて、成長してきた姿を見ているので。嬉しくもあるし、妬みじゃないですけど(笑)「いいなー」みたいなのはありますね。
柳下 瀬戸は吸収力が早いですよね。作品毎に、自分の役の役割を的確に自分なりの解釈で表現しているのがすごいなと思う。いろんなものを観る度に、器用な人だなと思いますね。
瀬戸 やっぱり、お互いの作品をよく観てるしね。
柳下 そうだね、D-BOYSの中でもラジオとか定期的に会う機会があるから、「次、これをやる」と聞くと気になって「観に行かなきゃ」と思うし。
瀬戸 そういう相手がこんなにも近くにいるのはいい環境だなと思いますね。

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――柳下さんが次に出る舞台が『オーファンズ』。出演の話を聞いたときはどう思いましたか?
柳下 僕がこの作品を決めたんですよ。『真田十勇士』でご一緒した宮田(慶子)さんにまた演出していただけるというのが決まって、今まで自分がやってこなかったものに挑戦したいなと思ったんです。それで、密度の高い会話劇ということで『オーファンズ』を選びました。今稽古をしていて、作品力の素晴らしさと同時に、演じる難しさを痛感しています。

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――閉ざされた家で暮らす孤児の兄弟、トリート(柳下)とフィリップ(平埜生成)のところに、ハロルド(高橋和也)が「誘拐」されて連れられてきたところから始まる『オーファンズ』。緊密な作品ですよね。
柳下 ……大変です(笑)。
瀬戸 でも、楽しそうだよね。大変といいながらも充実した稽古でこの作品に取り組んでいるのがわかるので。一昨年、僕は『マーキュリー・ファー』という作品をやったんですが、『オーファンズ』はちょっと似ている部分もあって。そういうところでも早く観たいなと思わせてくれる作品ですね。

――『オーファンズ』と『マーキュリー・ファー』が似ているというのは……?
柳下 両方とも兄弟の話だからね。
瀬戸 登場人物は『マーキュリー・ファー』の方が4人ほど多いですけど、孤児の兄弟が助け合っているところは似ているなと思いますね。ちょうど『マーキュリー・ファー』をやったのはIS(イスラム国)の事件が起きた頃で、この作品自体が預言書のようだったし(筆者注・『マーキュリー・ファー』は2005年、フィリップ・リドリーが書いた作品で、イラク戦争に介入したイギリス政府への憤りから書いたといわれている)、日本も平和ボケしていたらいけないなと思ったんです。両作品とも、親の愛を知らない子供たちが主人公なんですが、最近の日本でも虐待の問題など、親子の関係が僕らの小さい頃と比べてもおかしくなってきている気がします。愛というものを改めて見つめ直すというか、考えさせられる作品かなと思いますね。
柳下 両作品とも孤児の兄弟が出てくるけど、結局兄がどういう選択をしたかによって、弟が変わってくるんですよね。特に『オーファンズ』の場合フィリップは10年間家を出ていない。弟のフィリップが見るのは兄のトリートの姿だけなんです。ただ、トリートは孤独を一番恐れている人で、「弟のため」と言ってやっていることも、結局は自分のためなんですよね。関係性は歪んでいると思う。

――その二人のところに、外部から高橋和也さん演じるハロルドがやってきて、兄弟の関係も変わってくる……?
柳下 そうですね。ハロルドがある意味希望だし、絶望なんです。反社会で大人を嫌ってきたトリートは、自分と同じく孤児であるハロルドの温かさに触れてもなかなか受け止められないけど、フィリップはハロルドを素直に受け止める。そんな中で、トリートの心の中がぐちゃぐちゃになっていくんです。
瀬戸 今話を聞いていて、本当の家族じゃないけど、人には家族以上の絆が生まれるのかなと思いましたね。10年も人に会ってないなんて、「自分だったらどう役作りするだろう?」と考えました。何が正解とかはないんだろうけど、導き出すのが難しそう。でも、完成したら、きっとものすごい作品になるんだろうなと思いました。

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――柳下さんは今回の『オーファンズ』で宮田慶子さん、瀬戸さんは『マーキュリー・ファー』で白井晃さんという演出家と組まれています。演出家とはどう向かい合ってこられましたか?
柳下 僕の場合は宮田さんに一から教わるつもりでいます。『真田十勇士』再演中に怪我をしてご迷惑をおかけしたときもいろいろと支えてくださいました。宮田さんが言われたことを一つ一つクリアしていけば、必ず自分の身になるんだろうなと思っているので。宮田さんには、『演劇の母』という感覚で、安心感があるんです。僕は短気なんですが、宮田さんの言うことは全部受け止められる。
瀬戸 僕は白井さんにはみっちり教えていただきましたね。最初お話をした印象は紳士的で物腰が柔らかい方だなと思ったんですが、いざ稽古に入ってみると白井さんの手元には見えない竹刀があって(笑)、体育会系でめちゃくちゃしごかれました。『マーキュリー・ファー』は会話劇で台詞も膨大だったんですが、最初はそれに追われる自分がいたんです。でも、白井さんには「演劇だけど、演じるな」と言われたんですよ。最初は意味がわからなくて……(苦笑)。ただ、がむしゃらに一つ一つやってたんですが、段取りや台詞に追われるのでなく、その場にダレン(瀬戸さんの役名)として生きることだなと僕の中で決着がついたんです。妥協せずに付き合ってくださる演出家に出会えるのは、役者人生において財産だなと思いますね。
柳下 会話劇だと特に演出家との関わりが大事なんだなと思いますね。宮田さんが言っていたんですが、特にいい脚本だと、台詞をただ伝えるだけだと何も面白くない。台詞の奥にある人物や関係性をいかに作っていくかが大事なんですよね。それは一幕からの積み重ねなので、密度を濃くしていかないといけないんです。

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――特に『オーファンズ』は、登場人物三人のトライアングルをどう描くか、ですよね。
柳下 実際、稽古をしている時間と同じくらい、話し合いの時間が多いです。たとえば、トリートとハロルドが一緒に家に帰ってくるというシーンがあるんですが、二人がいつ出会ったのか、その前にどのくらいの時間一緒にいたのかという共通認識がないと、その後の会話のリズムや音量も変わってくるので。そういう話し合いが多いです。

――緻密に作ってらっしゃるんですね!
柳下 かなり……もう、(頭の中が)パンパンです(笑)。
瀬戸 ハハハ、パンパンか。
柳下 休憩時間以外は皆ほとんど出ずっぱりだから、「10分休憩」ってなったら無言で脳を休める(笑)。稽古だけじゃなく、家に帰ってからも気づくと稽古のことを思い出してますね。「今日、生成や和也さんがこういうふうに来たな」と思い描きながら、「トリートはどう思うだろう」と想像したり。白井さんが言っていた「演じるな」という感覚は、会話劇では特に強いですね。見せようとするんじゃなく、相手と会話するところから始まるんだなと思う。

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――『マーキュリー・ファー』はハードな作品で、演じるのは大変だったんじゃないでしょうか?
瀬戸 そうですね、本当に1ステージ1ステージが勝負で。追いつめられている感じはなかったんですけど、体はどんどんやせていった。でも、そういうのが嬉しかったりするんですよ。ちゃんと、作品に浸れてるんだなと思って。だから、大もこういう作品を自分で選んだというのがいいなと思いましたね。
柳下 今回自分が作品を選べたので、とことん自分が追いつめられるような作品でないと、せっかく宮田さんとやる意味がないなと思って。

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――そこまで役者として自分を追い込めるって、すごいことだなと思います。
柳下 僕は去年怪我をして、仕事を休んだんですよ。この作品を選んだのは休む前でしたけど、自分の中で何か立ち止まってる気がしてたんですよね。僕は(俳優を始めて)10年目になるんですが、このままずっとやっていてもあまり変わらないなという感じがあった。刺激というと言葉が軽くなっちゃうけど、何か乗り越えられるような作品をあえて自分に与えたいなと思ったんです。宮田さんとできるワクワク感もありますが、自分が演じ切れなかったら作品の良さが一ミリも伝わらないというプレッシャーの中で戦っていますね。
瀬戸 本当に楽しみですよ。この3人でどういう世界を作って、僕たち観客に届けてくれるのか。大のことも、『オーファンズ』という作品も信頼しているから、観られるのが楽しみです。
柳下 この作品が伝えたいのは、本当によりどころがないとき、人間関係でどれだけ救われるだろうということ。人の温かさが再認識できるような作品だと思う。今の世の中はSNSなどが普及して、顔が見えなくても連絡が取れる事が非常に多くて、人とのコミュニケーションが軽いものになっている気がするんです。『オーファンズ』は1983年の戯曲でベトナム戦争後、人とつながっていたかった時代の話。だからこそ時代を超えて、今の日本に伝えられるメッセージがたくさんあるんじゃないかと思います。そういう意味でも、皆さんに観ていただきたいですね。

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柳下大(やなぎした・とも)
1988年6月3日 生まれ、神奈川県出身。テレビ・舞台などで活躍。主な出演作品:舞台「真田十勇士」(13,15)演出:宮田慶子 猿飛佐助 役、TBS「結婚式の前日に」、BSスカパー×時代劇専門ch「果し合い」、舞台「いつも心に太陽を」、「熱海殺人事件 Battle Royal」演出:岡村俊一 大山金太郎役、ブロードウェイ・ミュージカル「アダムス・ファミリー」演出:白井晃 など。

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瀬戸康史(せと・こうじ)

1988年5月18日生まれ、福岡県出身。テレビ・映画・舞台と幅広く活躍。主な出演作品NHK連続テレビ小説「あさが来た」 成澤泉 役、TBS「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」橋本諒太郎 役 (2016年4月~O.A)、TBS「マザー・ゲーム~彼女たちの階級~」、舞台「マーキュリー・ファー~MERCURY FUR~」演出:白井晃、NHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」、「花燃ゆ」、フジテレビ「ロストデイズ」、映画「合葬」(主演)など。


『オーファンズ』
【東京公演】2016年2月10日(水)~2月21日(日) 東京芸術劇場 シアターウエスト
【兵庫公演】2016年2月27日(土)~2月28日(日). 新神戸オリエンタル劇場
脚本:ライル・ケスラー
翻訳:谷賢一
演出:宮田慶子.
出演:柳下大、平埜生成、高橋和也
問い合わせ先: ワタナベエンターテインメント 
TEL:03-5410-1885(平日 11:00~18:00)
http://orphans.westage.jp/


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