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『PHANTOM～THE UNTOLD STORY～』は『オペラ座の怪人』で有名なファントム＝エリックの今まで語られなかった生涯を描く作品（原作スーザン・ケイ）。2011年にPART1、2012年にPART2が上演され、今回初めてPART1とPART2の連続上演となります。

この世のものとは思えぬほど醜い容貌に生まれついたエリックと母親マドレーヌとの相克、そして彼が自分の運命を受け入れで一人生きていくことを決意するまでを描くPART1「The Unkissed Child」、ペルシャに流れ着いたエリックがやがてパリ、オペラ座の地下に住み着き「オペラ座の怪人」と呼ばれるようになり、迎える結末までを描くPART2「The Kiss of Christine」。

エキゾチックなペルシャの宮殿や豪奢なオペラ座などを瞬時に舞台上に出現させるのは、『レ・ミゼラブル』新演出版で舞台美術を担当したマット・キンリー。映像と舞台セットとを融合させた美術が、キャラクターの心情を深く描き出す倉田淳の演出とマッチし、『PHANTOM』の独特の世界観を生み出すことに貢献しました。

筆者が観劇したPART2のHalevyチームでは、山本芳樹さんがエリックを演じました。アンドリュー・ロイド・ウェバー版やモーリー・イェストン版など様々に舞台化されてきた「ファントム」の物語で世界中にファンントムを演じた役者は数多くいても、ファントムの幼少期から生涯のすべてを演じた役者は山本さんただ一人。山本さんは、容貌のために過酷な運命を強いられたエリックの孤独な魂を徹底的に描き出します。舞台上では常に仮面をかぶっているエリックですが、顔の表情が見えなくても彼の苦悩が手に取るように伝わってくるのです。そして、孤独に震える彼がナーディル（石飛幸治さん）やガルニエ（仲原裕之さん）、クリスティーヌ（久保優二さん）など心を交わせる人と出会うことで変わっていく様をビビッドに見せて、見る者の心を揺さぶります。

PART2後半はウェバー版などで誰もが知る「オペラ座の怪人」の物語に。クリスティーヌの久保さんは美しい歌姫の心のひだを繊細に演じ、クリスティーの恋人ラウルを演じる曽世海司さんはファントムやクリスティーヌに対する複雑な心情をリアリティあるアプローチで表現。ラスト前のシーンが初演時のものから変わったことで、さらなる感動を呼び起こしました。

ダブルキャストでの上演で、PART1のGluckチームでは松本慎也さんがエリックの少年時代を初めて演じ、PART2のScribeチームでは笠原浩夫さんが初演に引き続きエリックを演じて、こちらも見逃せません。

怪人と呼ばれてしまった男の数奇な運命をたどる圧倒的な3時間。繰り広げるドラマに身をゆだねるうちに、人は孤独であり、だからこそ他者を求めずにはいられない切なさを考えずにはいられません。これは、スタジオライフが『トーマの心臓』などで繰り返し取り上げてきたテーマでもあります。劇団創立30周年記念公演のラストを締めくくり、さらに31周年目以降の未来へとつながる公演となりました。

（舞台写真　PART1はこちら）

スタジオライフ『PHANTOM』は2015年11月11日～12月7日、シアターサンモールにて上演されます。

スタジオライフ公式ホームページ　http://www.studio-life.com/