インタビュー & 特集
INTERVIEW! 『ヴェローナの二紳士』溝端淳平さん
舞台『ムサシ』で蜷川幸雄演出作品に初出演した溝端淳平さんが、シェイクスピアが描いた最古のコメディと言われる『ヴェローナの二紳士』で、初の女役に挑んでいます。蜷川さんから受け取った想い、作品への意気込みを伺いました。(取材:小野寺亜紀、舞台写真撮影:渡部孝弘)
INTERVIEW & SPECIAL 2015 11/6 UPDATE
『NECK』(河原雅彦演出)、『こんばんは、父さん』(永井愛作・演出)など舞台でも幅広く活躍している溝端淳平さん。念願だった蜷川幸雄演出作品に初出演したのは2013年の舞台『ムサシ』再々演。初演からのメンバーの中に入り、佐々木小次郎役として海外公演にも参加したこの舞台は緊張の連続だったと言います。
「稽古初日から一幕全部を通したのですが衝撃でした。台詞は覚えていたものの、あの藤原竜也さん吉田鋼太郎さん白石加代子さんの中にいきなり入り、演じるのはカルチャーショックと言いますか…。人生で一番緊張したのは『ムサシ』の本番より、むしろ『ムサシ』の初稽古でした(笑)。手を抜く人は誰もいない、みなさんプロフェッショナル。蜷川さんの稽古は、“本番でやらないことは稽古でやらない”というもの。衣装もセットも全部本物ですから。そんな中、僕はいっぱいいっぱいだったので蜷川さんからそれほど言われることはなかったのですが、とてもストイックな稽古場でしたね」
その後出演作品ではなくても蜷川氏の稽古場を見学。若い役者を追いこみ、殻を破らせる現場を改めて体感するなかで、多くの事を学んだそう。
「蜷川さんは『いつでも稽古場に来て、何かをつかんでいけ』という姿勢でした。『映像で等身大の役をそれなりに演じられるのは分かった、その次に何をするんだ』と。若い役者を成長させるハードルを与え続けてくれる方。僕が言うのもおこがましいですが、本当に日本の演劇界になくてはならない方です。久々にお会いすると、今僕が何を感じているのかすごく細かく感じ取って下さる。だからいつも『今の状態で蜷川さんにお会いして大丈夫か』と問いかけながら、会いに行くようにしていました。僕も26歳になり俳優としてさらに成長しなくてはいけない。そういう時に、今回女性役という高いハードルを与えて下さったことに愛を感じます。これからも蜷川さんの作品に何作も携われるよう、食らいついていけたらと思います」
役者としてかなり貪欲で頼もしい溝端さん。蜷川氏から「目がいい」と言われる端正な容姿も後押しになり、男優だけで演じるオールメールの舞台『ヴェローナの二紳士』で初の女役、ジュリアを演じています。蜷川氏がシェイクスピア全37戯曲上演を目指す“彩の国シェイクスピア・シリーズ”の第31弾。男装までして、愛する人のためにヴェローナからミラノまでやってくる一途な女性役です。
「僕が女性役をやり、さらに男装をするという…。本当に心から女性にならなければいけないと思います。女性ってどういう生き物なんだろうと考えることも増えました。女性はなぜあんなに甘いもの好きなのか、なぜ互いに聞いているようで聞いていない会話が成り立つのか(笑)。女性の気持ちを理解することに四苦八苦しています。僕自身姉が二人、姪っ子が三人いる女系家族なんですが、普段はあまり“女性っぽいね”と言われることもないので。でもジュリアは男や女ということを切り離して考えても、ものすごく正直でまっすぐで、芯のある素敵な人物。ミステリアスな影のあるタイプではない、という点では僕自身に近いのかなとも思います。目標として一番に挙げたいのは、女性に共感してもらえるジュリアであること。男性が作った自己満足的な理想の女性像にだけにはしたくないです」
恋や友情、裏切りを軸にした若者たちの騒動を描く本作。これを男優だけで演じる「普通じゃないところに魅力がある」と語る溝端さん。「舞台はギリギリの勝負に出ているところが魅力。オールメールシリーズもそうだと思います。この作品は喜劇ですが、後半の展開には驚かされます。恋愛の良さはもちろん、若者の恋愛のはかなさなども冷静に描かれ、リアリティーがあります。シェイクスピア作品の中でも観やすい作品ですし、ぜひ僕の初めての女性役も含めて楽しみに観て頂けたらなと思います」
彩の国シェイクスピア・シリーズ第31弾
『ヴェローナの二紳士』
作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:蜷川幸雄
演出補:井上尊晶
翻訳:松岡和子
出演:溝端淳平、三浦涼介、高橋光臣、月川悠貴、他
◆埼玉公演
日程:2015年10月12日(月・祝)~31日(土)※公演終了
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
彩の国さいたま芸術劇場 0570-064-939
◆大阪公演
日程:2015年11月6日(金)~9日(月)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
梅田芸術劇場 06-6377-3888
◆豊橋公演
日程:2015年11月14日(土)・15日(日)
会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
穂の国とよはし芸術劇場 0532-39-8810
◆福岡公演
日程:2015年11月21日(土)~23日(月祝)
会場:キャナルシティ劇場
キョードー西日本 092-714-0159