インタビュー & 特集

INTERVIEW! 「配達されたい私たち」一色洋平さん×野坂実さん

一色伸幸原作の「配達されたい私たち」が舞台化され、10月27日から中野ザ・ポケッツで幕を開ける。7年越しの思いが詰まった手紙と向き合う人々と、それを届けることを人生最後の使命にしようとした青年の交流と衝突を描いた物語で主役の澤野を演じる一色洋平と演出の野坂実に、作品に取り組む意気込みと演劇への思いを聞いた。 (文・稽古場撮影/仲野マリ)

INTERVIEW & SPECIAL 2015 10/26 UPDATE

もし7年前に届くはずだった手紙を今受け取ったら、あなたはどうしますか?
知らされるはずだった大事なことを知らずに生きた7年間、もう戻れない過去を、人はどうやって受け止めるのか…。

「息子と知らずにオファーする」から始まったキャスティング

うつ病の主人公・澤野は、自殺しようと入った廃屋で、配達されずに捨てられている手紙の山を見つける。死ぬ前にその手紙を届けることが自分の使命だと感じた澤野は、宛名を頼りに「配達」を始める、という話だ。この作品の原作者・一色伸幸は、「私をスキーに連れてって」「病院へ行こう」など脚本家として爆発的な売れっ子となった後、自身もうつ病になった経験があり、そのときの実体験をもとに書いたのがこの作品だ。先行してTVドラマにはなっているが、舞台化は初めて。
脚本・演出は、文学座、加藤健一事務所などで俳優として活躍した後、劇作家・演出家に転身した野坂実。脚色に際しての構成力が買われてのオファーだが、俳優・作家としての経験に裏打ちされた演出にも定評がある。

キャスト陣にはそうそうたるメンバーが名を連ねる。「ネオ歌舞伎」を追求する「花組芝居」で演出、作家、座長、俳優を兼任する加納幸和、宝塚歌劇団月組のTOP娘役として涼風真世、天海祐希の相手役を務めた麻乃佳世、劇団四季「ライオンキング」、「クレイジー・フォー・ユー」等の主要俳優として活躍した広瀬彰勇、劇団「黒テント」の宮崎恵治、ミュージカル「貴婦人の時間」で主役クレアの娘時代を演じた飯野めぐみなど、演劇ファンをうならせる実力者をキャスティングできたのは、演劇を愛し交友関係の広い横井プロデューサーならではだ。
その横井プロデューサー、主人公・澤野役には原作者の息子である一色洋平を配しているが、たまたま「DULL-COLORED POP vol.14『河童』」を吉祥寺シアターで観劇して彼の演技に惚れ込み、息子であると知らずにオファーしたという。

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 顔合わせは10月3日。短い稽古期間を最大限に生かすため、セリフは最初からバッチリ入ってます!(写真:上段左から野坂実、宮崎恵治、広瀬彰勇、加納幸和、宮ゆい、下段左から飯野めぐみ、麻乃佳世、一色洋平、永峰あや)

 

――うつ病の青年を描く難しさはありますか?

一色「普段は表情も声も大きい方なので、笑わない役というのはある意味真逆の挑戦。野坂さんにも、表情が出過ぎたらすぐに言ってください、とお願いしています。でも逆に無表情すぎるとロボットみたいになって、うつ状態を演じてるのとは違ってきちゃうので、さじ加減とか塩梅が本当に難しい。稽古の中で、できてるよ、と声もかけてもらっているので、あせらずがんばっています。あとはイメージをしっかり持つことが大事かな。役者がイメージしたセリフというのは、必ずお客さんに伝わるものだと思っているので。何を思ってその言葉が出てきたのか。それが声となって届く。今回はうつというフィルターがかかるので、いつもよりジャストミートする音のストライクゾーンが狭いと思うんですが、伝えたいことを明確になるよう、でも力むことなく、セリフを大切にしていきたいです」

野坂「うつ病によって、感情とか表情とか自信とか、すべてを喪失してゼロの状態の澤野というキャラクターが、手紙を配達することによって手紙を渡した相手のいろいろな感情を受け止め、もらったものが彼の中で変化していく話です。ほんのちょっとずつ変化していく澤野をどう描くかというのが、今回のみどころであり、キモでもあります。今回は非常に経験値の高いキャストに恵まれ、短時間で稽古がどんどん進んでいきます。きっと質の高い演劇に仕上がると思います」

男女ロング
男女並び
平凡な主婦は、かつて面識もない死刑囚に恋をした自分の過去を突き付けられる。

「手紙を読む」シーンへのこだわり

――配達された手紙を読むシーンを、もらった当人が最後まで読み通すという演出にした背景には何が込められていますか?

野坂「原作ものと一口でいっても、まったく新しいテイストのものを構築するやり方だってあります。ただ、基本的に原作ものをやるということは、もともとその作品が好きだということだから、原作の面白さを十分取り入れた上でなければ真の良さは出ないんではないと僕は考えるほうで。今回は、すべての『手紙』を削らずに、全部読むという長台詞でお願いしました。俳優さんたちには苦行かもしれません(笑)」

一色「最初に台本をいただいたとき、手紙の文章が小説版と同じく手つかずで残っていたことにとても感激しました。父の原作ですから、やはり思い入れがあって・・・。本当にうれしかったです。僕は配達するだけで手紙は読まず、読むのを聞いてばかりですが。そのうち1通だけは、女性が途中から涙で読めなくなって残りを僕(澤野)が引き取って読む、という演出があったんですけれど、それすらも野坂さんはカットし、全部の手紙を読み通すことを貫いたんです」

野坂「澤野は届ける7通の手紙で少しずつ変化していきますが、手紙をもらう方のキャラクターは、自分に宛てられた1通の手紙によってのみ変化していかなければなりません。だから、その手紙は赤の他人ではなく、当事者が読まなくてはならないんです。そうでなければ心情の変化が見えないし、観客も感情移入できないでしょう」

男男
読む男
かつての栄光に背を向けてきた元マラソン選手に、スポーツカメラマンの手紙が届く。

一色「手紙を読まない僕にもちゃんと長台詞は用意されてます!(笑)うつになった経緯のようなものを、遺書の代わりのように語るモノローグで、僕は、澤野がなぜそれを語りはじめたのかということと、なぜ延々と続いて止まらないのか、というところがすごく大事だと思う。その理由やきっかけは、モノローグが始まる数行前に起こったことではなく、物語の初めから徐々に積み重なり高まってこのモノローグにつながっている、そういうものだと解釈して演じています」

――「読む」ことで動きを封じられるデメリットはありませんか?

野坂「真正面から手紙を読むということが、劇場のいい空気、いい時間、つまり真の劇空間をもたらすと信じています。動きに目を奪われる舞台であっても、物語が浮かび上がらなければ何もならない。作家や演出家が目立って物語自体が引き立たないのは、作家や演出家にとって敗北だと僕は思っている。観客が俳優を見ているうちに、話に引きずり込まれる、そういうのが僕たちの最終目的のはず。役者さんが、意味もなく走り回り、わけのわからない言葉を言われても、僕はちっとも面白いと思えないんです。かといって、動かないで、きれいな言葉だけいって、雰囲気芝居になってしまうのもつまらない。あくまでも役者が何を言っているのか、何を言わんとしているのか、そこが大事です。動機がはっきりしていると、お客さんも心揺さぶられるものがあるはず。そういう意味で、今回の演出は、邪魔なものは排除してつくりました。この本はこのやり方じゃないと、大味に、薄い感じになってしまう。細やかな発声の中に感情の起伏が入ってくれば、すごく見ごたえのあるものになりますよ」

ダメ出し
時にダメ出し。演出家の言葉に耳を傾ける。

「現実を変えたい」と思う人たちへのメッセージ

――原作と、ラストが違うそうですね。

野坂「原作小説では、主人公が最後に『手紙を書きたい』と言うけれど、結局書かずに終わってしまいます。それで終わらせちゃうのがもったいないなと思って、そこからスタートしたらどうだろうというのがそもそものアイデア。原作を読んだ人は原作の形をした新しい新作だと思うし、読んでない方はこれが原作だと思うでしょうね」

――そのラストにした意図は?

「今回のお話は決して手放しのハッピーエンドではありません。でも『現実を変えたい』という思いに満ちている。小説にも『思いは届けるためにあるんだ』っていうセリフがあります。その気持ちを増幅させて、強く思えば現実は変わるんだというメッセージを今回の脚本に込めたつもりです。演劇にできることって何かと考えたとき、たとえば、虐待されている子どもたちを助けることはできないかもしれないけれど、彼らの苦痛や苦しみの時間を忘れさせる力はあると思うんです。『苦しいことがあったとしても、強く自分が現実を変えたいと思って行動に移せば、きっと何かが変わるんだよ』というのを、舞台の上で伝えたいと思います」

 

 「配達されたい私たち」 公演情報

チラシ配達されたい手紙たち

<期間>
2015年10月27日 (火) ~2015年11月1日 (日)

<公演日・開演時間>
10/27(火)19:00
10/28(水)14:00/19:00
10/29(木)14:00
10/30(金)19:00
10/31(土)14:00/19:00
11/1(日)13:30

<キャスト>
一色洋平/加納幸和/広瀬彰勇/宮崎恵治/飯野めぐみ/永峰あや/宮ゆい /麻乃佳世

<会場>中野ザ・ポケット
<チケット>前売・当日とも5,000円(税込)
<主催>(株)T’s project (TEL:03-5532-8688)
<スタッフ>
原作:一色伸幸/演出脚本:野坂実/美術:仁平祐也/照明:松本永/音響:遠藤宏志/舞台監督:赤坂有紀子/制作:豊城礼/音楽:永山尚太/広告デザイン:筒井健介/プロデューサー:横井克裕

<チケット申し込み方法>
① 主催(株)T’s projectに問い合わせ(公演イメージデザインチケット)
氏名、連絡先、住所、枚数、公演日時を明記しメールで申し込み。
メール: info@tsproject.biz
② カンフェティのURLより申込み 
http://s.confetti-web.com/detail.php?tid=30116&
セブンイレブン発券(サービス・発券手数料216円)

公演公式サイト http://www.tsproject.biz/news/index.html
スペシャル動画サイト(原作者・一色伸幸氏も登場) http://youtu.be/Bj7Obrf2zRA
 
 Facebookページ https://www.facebook.com/haitasusaretaiwatashitati?fref=ts


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