インタビュー & 特集

mag special INTERVIEW! 『プリンス・オブ・ブロードウェイ』ハロルド・プリンスさん

26歳で『ウエスト・サイド・ストーリー』初演版をプロデュースし、その後も『キャバレー』『スウィーニー・トッド』『オペラ座の怪人』など数々の傑作ミュージカルを生み出した天才ハロルド・プリンス。トニー賞を21度受賞した彼の偉大な人生の中には、舞台への並々ならぬ意欲、素晴らしい出会い、家族への愛が詰まっていました。若き日の驚きのエピソードや、自ら演出する世界初演作『プリンス・オブ・ブロードウェイ』について、“ミスター・ブロードウェイ”ことハロルド・プリンスが語ってくれました。(文/小野寺亜紀)

INTERVIEW & SPECIAL 2015 10/23 UPDATE

 20代で演劇プロデューサーとして成功し、その後演出家としてもミュージカルの金字塔を次々と打ち立てたハロルド・プリンス氏。彼のキャリアのスタートは、戦後間もない1950年代にさかのぼります。
「大学を卒業したばかりの19歳の時、私はある偉大なプロデューサーにシャイなので手紙で伝えたんだ。『お金がもらえるような仕事はできないと思いますが、何か自分にできることはないですか?』ってね。その内容に興味を持ってくれて、私はオフィスで切手を貼ったり一番簡単な仕事からやらせてもらいました。とにかく野心とやる気だけはあったんです。ある美術デザイナーに書類を届けるため、夜遅くまで家の前で待っていることもありました。彼が実は『ウエスト・サイド・ストーリー』の美術デザイナーなんだけどね。私はいつも本当に幸運で、ベストなタイミングで正しい場所にいれたおかげで、こうやってキャリアを積んでこられたんだよ。(スティーヴン・)ソンドハイムとの出会いもそう。『南太平洋』の初日、僕は21歳、ソンドハイムは19歳だったけど、ある友人から『ハル、こちらがスティーヴンだよ』と紹介されていなかったら、我々は出会っていなかったと思う。ラッキーでした!」

 ソンドハイムとはその後、『ウエスト・サイド・ストーリー』や『カンパニー』『リトル・ナイト・ミュージック』『キャンディード』など数々の作品で組むことになります。
「やはり自分の作品の中でも一番結果的に満足しているのは、ソンドハイムと一緒にやった作品ですね。彼とはこんな面白いこともあってね。ある時、ボストンでのプロダクションの進行に悩んでいた私は、ソンドハイムに電話をしてふと最後に『君はどうしてる?』と訊ねたんだ。すると彼は『今関わっている『ウエスト・サイド・ストーリー』のプロデューサーがいなくなって困ってる』と。ニューヨークへ戻ると、レナード・バーンスタインやジェローム・ロビンス、アーサー・ロレンツたちが集まって、『本番が迎えられない』と話してたんだ。当時としては、ハッピーなコメディではなく、路上でギャングたちが喧嘩をしているような題材は、どのプロデューサーもやりたがらなかったんですよ。そうして私が手を挙げて、結果、自分の人生を変えたといっても過言ではない、素晴らしくエキサイティングなミュージカルとなったわけです」

 ソンドハイムが音楽を手掛け、彼が共同演出・製作をした1971年の『フォーリーズ』(トニー賞受賞)も、思い出深い作品だと言います。
「レビュー劇場を取り壊す前に、4人のスターたちが自分の人生を見つめ直すという内容なんですが、私自身もこの頃、自分の仕事以外の人生を見直したいと思っていたので、主役に自分の思いを乗せることができたんです。私には二人の子どもと妻がいます。仕事人間なので、それまで家族をないがしろにしていなかったか、と改めて自分を見つめ直すことができました。1年半上演されたものの、残念ながらメガヒットとはいきませんでしたが、とても大事に思っています」

 60年にわたりブロードウェイの歴史に深く関わってきたハロルド氏。注目作『プリンス・オブ・ブロードウェイ』では、その長きにわたるブロードウェイの変化を彼の作品群を通して描きます。
「古き良き時代のミュージカルから、ポピュラー音楽の流れが入り、ロックなども使用され音楽の様式が変わってきました。同時に内容もシリアスなものになっていきました。そのひとつの芸術形態の変化をこの作品では描きたいです。今ブロードウェイは少し新しい方向に進み始めたのでは、と思うところがあります。今までは出資家たちの影響が強すぎたかもしれません。僕の誇りに思っている『キャバレー』『スウィーニー・トッド』『フォーリーズ』などは、恐らく資金繰りが難しい題材で近年では実現しなかったでしょう。それが今、リバイバル上演もされ、クリエイターの皆さんに信頼が戻ってきているように感じます。素晴らしいことです」

 親日家でも知られるハロルド氏。毎回来日の際には、日本の文化に触れることを楽しみにしています。
「宝塚歌劇も2回劇場で観たことがあります。『風と共に去りぬ』とあとはレビューショーでした。世界に類のない素晴らしい舞台で、心から楽しめました。日本で観るものは歌舞伎など何でも好きですが、能の舞台はあまりに面白くて、ソンドハイムや妻と劇場から出てくることができなかったほどです。集中したエネルギーが漂っていますよね。その舞台に影響を受けて作ったのが『太平洋序曲』です」

 今作に出演している柚希礼音さんとは昨年ニューヨークで会い、『くたばれ!ヤンキース』の歌を英語で披露してもらったと言います。
「礼音さんの英語力についても知らなかったのですが、本当に素晴らしい才能を持っている方、“本物”だとすぐに分かりました。熱心な勉強家でもあり、とても謙虚な方ですね。彼女には今回、大きな部分を担ってもらいますよ。舞台上にタイムズスクエアが現れて、ブロードウェイで私が仕事を始めた50年代、そして60年代と、モノトーンの世界からどんどんカラーへと変わっていく場面があるのですが、そこで礼音さんにずっと踊り続けてもらいます。ブロードウェイに憧れてやってくる女性の役で、すべてを踊りで表現してもらいます。また、歌は『蜘蛛女のキス』を日本語で歌ってもらいます。これはブロードウェイ公演が実現した時も、日本語で歌ってもらうのがエキサイティングじゃないかなと考えています」

 才能溢れるスーザン・ストローマンさんが共同演出・振付を担当。他にもトニー賞受賞経験が豊富なクリエイティブ・スタッフが、ブロードウェイスターの揃うステージを圧巻の見せ場で彩ります。
「今回、観客の皆さんに『昔は良かったね』と思って頂くのではなく、ここからさらに何か新しいものが始まるというのを感じてほしい。ですから過去のシーン、振付を掘り起こすのではなく、スーザンには新しい振付もしてもらい、若く才能ある作曲家、ジェイソン・ロバート・ブラウンに全編新しく編曲してもらっています。そして最後のナンバーは新曲です。タイトルは、“Wait till you see what next”。『次にどんな新しいものがくるか、楽しみにしていてください』というような歌です。これからの未来に続くブロードウェイの輝きを感じ取ってほしいです」

※『omoshii mag vol.3」ではハロルド・プリンスさんのロングバージョンのインタビューや写真、記者会見の様子などを掲載!

【プロフィール】
ハロルド・プリンス(Harold Prince)
芝居好きの家族の元、ニューヨークで生まれ育つ。1954年に20代でプロデュースした『パジャマ・ゲーム』がトニー賞最優秀ミュージカル作品賞を受賞。これを皮切りに、前人未到のトニー賞21度受賞を成し遂げる。『屋根の上のヴァイオリン弾き』(1964年)、『キャバレー』(1966年)、『カンパニー』(1970年)、『スウィーニー・トッド』(1979年)、『オペラ座の怪人』(1988年)など、名プロデューサー・名演出家として87歳の今も第一線で活躍する。2006年トニー賞特別功労賞受賞。2016年には新作ミュージカル『The Band’s Visit』の上演が予定されている

【データ】
三井住友VISAカードpresents
ワールドプレミア ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』
演出:ハロルド・プリンス
共同演出・振付:スーザン・ストローマン
脚本:デヴィッド・トンプソン
音楽スーパーバイザー・編曲:ジェイソン・ロバート・ブラウン
舞台美術デザイン:ベオウルフ・ボリット
衣裳:ウィリアム・アイヴィ・ロング
出演:ラミン・カリムルー、柚希礼音、シュラー・ヘンズリー、ケイリー・アン・ヴォーヒーズ、エミリー・スキナー、ナンシー・オペル、デヴィッド・ピトゥ、マリアンド・トーレス/市村正親(プリンス役声の出演)、ほか

◆東京公演
10月23日(金)~11月22日(日) 東急シアターオーブ
◆大阪公演
11月28日(土)~12月10日(木) 梅田芸術劇場メインホール
公式HP  http://pobjp.com/


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