連載

第5回 島口哲朗さん

第5回ゲスト『島口哲朗のオレ哲学』第4週

 タレントで、舞台・役者・声優・ミュージシャン・プロデューサーとしてマルチに活躍の川本成(あさりど)さんがホストとなって、エンタメ業界のみなさまに聞く、「オレの哲学とは?」。 連載対談「川本成のオレ哲学」(略してオレ哲)。第5回目のゲストは、剣伎衆かむゐ主宰の島口哲朗さんです。第4週はサムライ・ソードアーティストの島口さんの最終回。最後まで哲学がもりだくさんです。(撮影/熊谷仁男 構成・文/中村恵美)

COLUMN 2012 12/29 UPDATE

島口:日本人の間合いについてなんですが、最近、駅なんかで、ぶつかる人多いじゃないですか。

川本:はいはいはい、いますね。

島口:止まってるのに、ドンってぶつかってきて、すいませんって謝っている。

川本:ごめんなさいを言わない人もいますよね。

島口:ええ。こういうところからも、

間合いがおかしくなってきてるんじゃないか

って感じます

川本:そうだと思います。

島口:ちゃんとした間合いが、昔はあったわけですよね。でも、それが変な間合い、気持ち悪い間合いになってきている。

川本:飲み屋のおねーちゃんでもね、近すぎる、距離感!みたいな(笑) 。

島口:欧米化してる部分もあると思うんですよ。昔はこうじゃなかったと思います。

川本:うんうん。

島口:袖振り合うも多生の縁ということもある思うけれど、限度もある。好き同士だったらいいんですけど…。今は、会社行く時に、否応なしに満員電車のらなきゃいけなくて、そうなったら人間ってどうするかっていうと、感覚を消すしか無い。それが当たり前になってしまう。僕はもしかしたらこの世界に入ったのも、あの満員電車が嫌だったこともあるんです。

川本:満員電車ねー。

島口:満員電車では、自分の常識を変えていかないといけない。

川本:だから、サラリーマンは電車で寝てんだ(笑)。

島口:そうですね、嫌でも汗かきながらでも行かなきゃ行けない。かといって、自分だけを快適にするわけにはいかないし、そうするつもりもないでしょ? 周りにいる人を殴ってあっち行け!って喧嘩しなきゃならなくなるから。結果、あの状態になっちゃうわけじゃないですか。

川本:うん。

島口:感覚を消すしかないように生きなきゃいけない。それっていろんなシチュエーションできっとあると思う。そうしているうちに距離感がマヒしてくるんです。

川本:なるほど。

島口:サービス業でも芝居でも何でもそうだけど、

距離感が上手く測れる人はいい

ですね。こっちが調子が良い時に、絶妙な間合いや表現をしてくれると、男でも女でも惚れますね。

川本:惚れますねえ!いい言葉だ。

島口:自分もそういうように感じてもらえるように、自分の道で生きていたい。

そして、そう感じたときは発信しないといけないと思う。これっていいことなんだぞって、自分なりに発信していかないと!

川本:うんうん。

島口:ただ、受信する側が、今、情報過多になってるから。何でもwikiを調べてwikiが正しいと思っちゃってるし。

川本:そーなんだよねぇ。簡単ですからねえ。

島口:違うと思うんですよ。まずは自分の目で見たの?って聞きたい。でもかといって、目で見た物しか信じない主義っていう極端なことをいうつもりもなくて、要は、

一回、自分で考えよう

と。

川本:うん。

島口:この芝居を見て、よかったのか悪かったのか。自分で考えてほしい。皆が好きって言っても自分が違うなら、それはそれでいい。それがきっと、役者さんを育てると思うし

川本:わざわざ自分の目でね。

島口:売れてるからOK、売れてないから駄目、じゃなくて、人と向き合いなさいよ、ということなんです。人と向き合う機会なんて限られてるんだから、貴重な時間なんだから。

川本:そうですね。

島口:僕は剣を教えてる人が4ケタは越えてるんで、ものすごくたくさんの人と出会っているんです。それはものすごく財産。

川本:俺ね、人が、最終的には熱意だと思ってる節があるし、その熱意は海を越えられるとおもってるんですが、それが島口さんにはありますよね。

島口:それは嬉しいですね。熱量とか熱意という言葉は、伊達ではないと思うんですよ。それこそ死んじゃったら冷たくなっていくわけで。

川本:ああ。

島口:平熱はあるわけですよね。36度から37度が普通で、病気になると40度になるけど、それを僕らは200度に見せたり2000度に見せたり、逆にマイナスにみせたり。ふつうじゃない世界とかを疑似で体験させる。でも、もっとシンプルに言ったら今おっしゃったように、人間としての想いの熱を伝えたい。僕にはこれしかないから。もう、明日死んでも後悔はないくらいです。

川本:うん。

島口:だけど、親が生きてるうちは、これは僕に限らず、

長生きしなきゃだめだ

と思ってます。それと、日本人として、やりたいこともまだたくさんある。海外行って、サムライの子孫に会うことができて、俺は日本人なんだと強く理解させてもらったこともありますし。

川本:ああ、その話はびっくりですね。

島口:仙台の石巻から伊達政宗が慶長遣欧使節団として、400年前に支倉常長という侍を派遣したんですが、その子孫が、セビリアのコヤデルという村に、今602人住んでるんです。支倉常長の銅像も建っているんですよ。僕はその村に行ったのですが、実際に刀を差して着物着ている人に、刀はタケミツだけど、それでも、そういう出で立ちの人間に、その村の人は400年ぶりにあったんですよ。

川本:ああ、そうか。

島口:彼らは日本語しゃべれないけど、その村には、仙台って言うバーがあったり、名前に。日本って言う意味のハポンという単語を入れていたり。たとえばカワモト・ハポン・マルチネスとかね。そして、「オレは日本人なんだと、俺の一族は日本人として誇りを持っているんだ」と主張している。

川本:海を越えてねえ。

島口:今の日本に住む、純粋な日本人が忘れがちなことなのに、日本人であることを誇りに思ってる民族が、遠くセルビアの近くにいるんです。すごくないですか! 

ちょうどその地で、日本語喋れないんだけど、あるおばあちゃんが来て、「うちのおじいちゃんがハポンだからと、会ってくれないか」と言ってきたんですよ。

川本:それで?

島口:「もう、彼は足がきかないから家まで来てほしい」と言うんで家まで行ったら、自分の意思を表すのもままならないようなおじいさんが、車椅子で点滴をつけた状態でいたんです。そして、「自分は日本人だ」という。

川本:うんうん。

島口:そこで、「何もできないけど、刀はあるからじゃあ、ちょっと舞います。見えますか」って聞いたら、かすかに頷くんですよ。そこで、なんとか玄関まできてもらって、扇子と剣だけで5分ぐらいパフォーマンスしたんです。そしたら、終わった後、おじいさんがしわに涙をにじませて泣いてくれて。

川本:おお!

島口:それ以来、何が出来るかわからないけど、でも俺はこの村に戻ってきて何かしら祭りをやろうと決めたんですよ。

川本:いいですね。

島口:おばあちゃんもね、「うちのおじいちゃん、あなたと同じ顔してるでしょ」っていうんですよ。400年経っちゃってるから、思いっきりスペイン人の顔してるんですけど(笑)。

川本:(笑)。

島口:全然違ってる(笑)。だけど感動しました。それはもう運命的な出会い。自分たちがやってることで人に何かを感じさせるってことは、物凄い影響があることなんですよ。

川本:そりゃそうですよ。

島口:一生に一度、特に海外は二度と見れないかもしれないんですよね。

川本:うん。

島口:去年フランス行ったりイタリア行ったりやっても、そこの会場の人はもう2度とサムライのパフォーマンスを見ないかもしれない。日本人とも二度と喋らないかもしれない。だからそういう想いを胸に帰国した時に、どんなストリートだろうが、ライブハウスだろうが、一人の人に、どれだけの熱を与えられるかを意識して、

誇りを持って剣を振ろう

と思った。

川本:うんうん。

島口:そして、今の日本人として、いろんな形のサムライスピリットを持った人たちとその村に、また行ってみたいと思っています。もしかしたらナルさんとその村に行くかもしれない。

川本:行ってみたいですね。

島口:ぜひ、行ってほしい! そして、そこで言葉に頼るんじゃなくて、何か演じてほしいんですよ。音楽でもパフォーマンスでもいい。それなら、異国の人でも絶対わかるから。ぜひ一緒に行きましょう!

島口哲朗さんは今回で最終回です。次回のゲストは、俳優・演出家の清水宏さんです。

ゲスト・プロフィール 島口哲朗(しまぐちてつろう)  
日本大学芸術学部映画学科出身。歌舞伎などの舞台で経験を積んだ後、1998年「剱伎衆かむゐ」を創設、主宰を務める。自らの俳優活動(舞台・映画・イベント)の他、2003年「KILL BILL vol1」に出演・振付、地球ゴージャス「クラウディア」や「星の大地に降る涙」公演の振付を担当し、殺陣師としても活躍。日本舞踊七々扇流名取。最近はアメリカやヨーロッパなどの海外のメディアに特集されることも多い。日本文化を発信する【SAMURAI SWORD ARTIST】である。

ホスト・プロフィール 川本成(かわもと・なる)
欽ちゃん劇団1期生として在籍。1994年“あさりど”結成。主な出演番組としてTV『笑っていいとも!』9代目いいとも青年隊、『王様のブランチ』他、TV・ラジオ・舞台に多数出演。現在はTV『スタイルプラス』、ラジオ「絶滅寸前男子」へのレギュラー出演や、アニメ『テニスの王子様』、『遊戯王デュエルモンスターズGX』、『GON』(2012年4月~)他で声優として活躍の場を広げ、舞台では『小堺クンのおすましでSHOW』、『冒険者たち』他、また自ら『時速246億』を主宰し、定期的かつ精力的に舞台をプロデュースしている。

★お知らせ★その1
「剱伎衆かむゐ」の今後の予定です!
2013年1月8日(火)~13日(日)「花や…蝶や…」(築地ブディストホール)
2012年~かむゐリーダー島口哲朗によるオリジナルメソッド【剱伎道】を国内外で開講
詳細は、剣伎衆かむゐHP http://www.k-kamui.com/・島口哲朗HP http://www.kamui-tetsuro.com

★お知らせ★その2
川本成さん出演イベントのお知らせです!
「ラジオ 絶滅寸前男子」日帰りバスツアー
日程:2013年1月27日(日)
行き先:兵庫県豊岡市・城崎温泉
旅行代金:おひとり様9,800円(消費税込み)
お問合せ・お申込み先:農協観光 兵庫支店 TEL078-333-5933(受付時間 平日9:00~17:30)
※お申込みは先着順となります
詳しくはラジオ絶滅寸前男子HPをご覧下さいhttp://anitama.com/zmd/

 ★お知らせ★その3
川本成さん出演舞台のお知らせです!
劇団たいしゅう小説家×空飛ぶ猫☆魂「サヨナラ誘拐犯のパーフェクト・ストーリー」
日程:2013年2月20日(水)~24日(日)
劇場:萬劇場
脚本・演出:西永貴文
出演:太田基裕・山本涼介・長戸勝彦・岸潤一郎・西興一郎・佐々木光弘・小休暁・永田卓也・石井苗子・川本成
日替わりゲスト:20日(水)湯澤幸一郎 / 21日(木)昼・夜 粟島瑞丸 / 22日(金)川尻恵太 / 23日(土)昼 竹本孝之 / 23日(土)夜 水谷あつし / 24日(日)政岡泰志・小林健一
料金:¥4,500
チケット:2013年1月12日(土)~発売開始
ローソンチケット(Lコード:31842) TEL0570-084-003関東地区24時間受付(発売初日は10:00AMより受付)
演劇・クラシック専用予約TEL0570-000-407(10:00~20:00)
事務局先行予約:12月15日(土)10:00~劇団たいしゅう小説家ホームページよりhttp://www.h4.dion.ne.jp/~tai-setu/
 お問合せ:劇団たいしゅう小説家 03-3710-2370(平日11:00~19:00)

 

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