連載

第5回ゲスト『島口哲朗のオレ哲学』第3週

 タレントで、舞台・役者・声優・ミュージシャン・プロデューサーとしてマルチに活躍の川本成(あさりど)さんがホストとなって、エンタメ業界のみなさまに聞く、「オレの哲学とは?」。 連載対談「川本成のオレ哲学」(略してオレ哲)。第5回目のゲストは、剣伎衆かむゐ主宰の島口哲朗さんです。第3週は海外でも活躍の場を広げているサムライ・ソードアーティストの島口さんが、ビジネスマンにも通じる哲学を語ります。(撮影/熊谷仁男 構成・文/中村恵美)

COLUMN 2012 12/3 UPDATE

川本:島口さんは、海外へは、かなり行かれてますよね。

島口:そうですね……でも、それも飛び込んでいってるのが多いですけどね。

川本:世界に出て、やっていることは、日本だけの独自の文化だと思うのか、それとも、これは世界共通だって思うことが多いのか、どっちなんですか?

島口:自分がやっていることに関しては、すごくネイティブなことだと思うんです。日本という国の中での、日本人が育んできたこと、サムライがやってきたこと。

川本:はあはあ。

島口:ただ、そうではあるんですけど、この

日本独自のことを、世界共通にさせるために動いていきたいっていうのが、モチベーション

ではありますね。海外の人がサムライの真似事をやったらおかしい…じゃなくて、むしろ、やってほしいんですよ。だからイタリアのフィレンツェとかポーランドのワルシャワに、不定期なんですけど、道場を持たせてもらってるんです。

川本:スゴい事ですよね!

島口:僕の野望は、ワールドツアーと、ワールドワークショップなんですよ。世界中に空手や柔道の道場があるように、

剣伎道の道場を作りたい

んです。

川本:なるほどね。

島口:日本は、よくも悪くも島国だから、コンテンツはいいんだけど、世界に出ていくようなビジョンがないんですね。それに比べると、中国の人って顔が似てるけど、大陸のせいか、結構好き勝手やるじゃないですか。

川本:うんうん。

島口:飛び出してとにかく広めていくって行くっていうスタンス。たとえ、ここはだめでも次移動して、次の場所で…という感じですよね。ところが、日本はそういう感覚よりも、自分がいるエリアを快適にしよう、という考えで進んでいる。だから剣伎にしても、流派を分けてすみ分けている。

川本:なるほど。

島口:そんな日本の中ではなくて、たまたま縁を頂いて外に行った時に、一気にバーンと可能性は広がったんですよ。今、いろんなお仕事がくるんですよ。芸能界で剣伎を演じたり教えたりするだけじゃなくて、ビジネスの世界で講演する仕事とか。

川本:へぇ!

島口:ビジネスマンがグローバルな社会に出て行くために、どういう風にしたらいいかといったことを教えてほしいと。そんなの、僕、分かんないですよ(笑)。でも、言えるとしたら、守・破・離という考え方がある、という話はします。

川本:またまた気になるワードが出てきましたよ!

島口:武道の用語で、物ごとを学んでいく3つの過程が、守・破・離。守る、破る、離れる。守るっていうのは、今、自分がいるベースをしっかりと守らなければ、いきなり突拍子もないことをやっても、だめだということです。

川本:うんうん。

島口:でもベースがあって、自然と、自分がやるべことをやったら、自然と他者を理解して、リスペクトできるようになっていく。

川本:なるほどなるほど。

島口:変わったことをやろうとか、個性を出そうとしなくても、自然と他の人のよさが見えてくるし、他流を受け入れられるんです。

川本:なるほど!

島口:だけどそこだけではとどまらず、ベースを離れる。趣味も範囲もとらわれない、自分の独自のモノって言うのは、第三段階で初めて出てくる。でもそれは剣術で言ったら達人の域なんですけど、僕らはそれを演じていかなければいけないから…ってなった時に、僕は不器用ながらに、守・破・離をくりかえしているんだと思ういますね。第一段階での守・破・離、第二段階での守・破・離って。

川本:あー、なるほどなるほど。

島口:常にまわってるんですよ。わけて考えるじゃなくて、自分が球みたいなもので。

川本:うんうん。

島口:自分を止めないためにも、日本だけのモノとか世界のモノってことで分けるのではなくて、世界でやるということは、自分自身が日本人だということを認識してはじめて向こうも、あ、お前は日本人なんだなと認識してリスペクトしてくれる。それは上下もなく、気持ちいいくらいフェアに、リスペクトした上で、今度は自分も、例えば、どうやってもルーマニア人にはなれないんだけど、ルーマニアの文化やその人のキャラクター把握することによって、その人をリスペクトする。そうできれば、その人から盗むことができる。

川本:僕らは何故感動するのだろう、僕らはなんで泣いたり笑ったりするんだろうって言うのを、よく話すんですが、興味があるのは、もっともっとよくわかんない感覚になってほしいし、よくわかんない感覚になりたいと思うんです。

島口:なるほど。

川本:そして、心が動いて、感動とはそういうことなんだと、感じたいというか。

島口:理屈じゃない。

川本:そうそう。僕らは、言葉がわかるから、逆に、言葉が邪魔をしているかもしれない。

島口:そうですね。そうだと思います。

川本:海外に行ってもわかんないけどすごくいいな、こいつすげーなって思う人がいるとか、そう言うことって、結局、そこに本当の何か凄いものがあって、言葉を越えてるんだと思いますけど。

島口:ああ、でもそうだと思う。

川本:目指す所は、そこじゃなくてもっと深い所、もしくはもっと超えた所。

島口:目に見えない所だと思う。

川本:ね。

島口:うん。

川本:これがさっきおっしゃった、心の奥底にあるものを、目指してるっていう…。

島口:自分で自分を理解している人って少ないと思うんですよ。他者から見てるから、他者が自分を共有してくれている部分もあって。目に見えないところで繋がっているすごさ、って確かにあるんですよ。でも、ナルさんがいうように言葉でわかっちゃうだけに、教育がある程度あって、頭の良い人ほど何かにとらわれちゃうと思うんですよ。

川本:そうだと思う。

島口:いかに自由に生きてるつもりでも、すごく自分が重くなってきて、それをセンスのいい人って、常に捨てようという努力を行ってると思うんです。

川本:ああ。なんかこう、自分でアップデートし続けてる。

島口:はい。

川本:今、自分でも予想付かないことをやろうブームが到来してるんですけどね。

島口:ああ、はい。

川本:満点を目指してて満点が100だとすると。その幅が決まってしまうから、自分でも予想できないことをセッティングすると、もう満点が100か80かもわからないゲーム。

島口:そうですね。200かもしれないし。

川本:要は自分が、欲しがり屋さんというか、怖いこともしたいし、感動もしたいってあるせいかもしれないけど、そのために、どんどん破壊をしていくというか。

島口:自分も、

創造と破壊を繰り返してやってきました。

かっこよく言いますけど、そうやって上手くまとめていただいたから言いますが、自分にとっては、それが「刀」だったわけなんですよ。カテゴライズがあるわけですよ、縄張りが。だから、20代の時は、要は食べれないから、僕らは海外行っちゃったんで。

川本:なのに、「攻めてるねぇ」って。

島口:そう言われる時期もありましたね。今はどうなんですかね、あんまり言われないかな。

川本:「攻めてるねぇ」言われると、「え?攻めてるってことなの、これが?」って感じではあったんですか?

島口:そうですねぇ。他人の言葉は他人の言葉でしかないんで。でも、実情は攻めてるってわけじゃないし、ねぇ。

川本:ああ

島口:自分を必死に生きてるだけなんで、必死に生きてることが攻めてるってとらえるならばそうだろうし、僕よりも早い速度で何かしてる人から見たら、ゆるやかに守ってるって見えるのかもしれないし。もし生きることが、皆がそれぞれの道を走り続けてる作業だとしたら、攻めてるねぇって人は休むこともしないでずーっと走っている人だと思います。もしかしたらジョギングペースなのかもしれないけど、でも止まってる人から見たら全然進んでいるし、ずーっと走ってたら距離は出ますよね。

川本:うんうんうん

島口:それに、走り続けてる人だって、たとえば違う分岐点で休憩するかもしれないし、何か、そういう走らないのも悪いことじゃない。たとえばオアシスのようなカテゴリーで一休みっていうのもありかもしれない。わかんないですね。もしかしたら僕がもうちょっと上手く喋れればなんにでもあわせられるだろうし、

何の話でも剣に持っていける様に生きていたい

し。

川本:なるほどなるほど

島口:たぶんそれはナルさんは自然にやってると思うんですよね。僕は形だけで捉えて、カテゴリーでみれば初めてだから、もしかしたら、これまで不協和音というか、やり辛いと感じられる部分があったかもしれない。僕がいちばん最初にいった「ナルさんはやりやすかったですね」って言うのは、きっとお客さんに対しても共演者に対しても僕らに対しても、自然にそのバランスをとっているからだと思うんです。

川本:僕、褒められてますねえ(笑)。

島口:僕は、殺陣の世界で、30代までは勝負をしたいと思っていた。偉そうにしている人に、どこまでできますか!って。でも、それすらも今はどうでもよくなりました。見ている人が決めればいい。もちろん、絶対、俺のほうがいいっていわせる自信はありますよ(笑)。だって、海外でパフォーマンスすると、本気で闘うつもりで来る人がいるんですから。

川本:ほう。

島口:言葉も通じないのにデッカイロシア人なんかが、「サムライってどんだけ強いのか、試したい!」って。

川本:ほうほうほう。

島口:「うそだろう!」みたいな(笑)。

川本:(笑)。

島口:それを、これは映画だとか演技だからと逃げたくはなかった。だから、そういうときは、つばぜり合い、やりますよ。僕、まだ負けたことないんですけど(笑)。

川本:ほう。

島口:その次は、「同じくらいの重い剣を振りましょう。思いっきり振ってごらん、どっちが早い?」っていうのをやるんです。これは、周りから見ても、わかりやすい。

川本:ほうほうほう。

島口:サル山のボス猿みたいな、力くらべを実際にやらないと、海外ではだめだというのがわかって。

川本:ほう。

島口:でももちろん、演劇の殺陣だったら別にそこまでする必要ないし。でも、「あ、今、ちょっと本気で、頑張ってたな」っていう部分の話で(笑)。

川本:うんうん。

島口:そうやって、いろんな人とコミュニケーションとる時に、時には攻撃的に、ちょっとわからせなきゃいけない時もあったり、やってきたことが嘘じゃなかったなってふうにわかる時もあったり、凄い人がいたら単純に感動したりする時があるわけです。俺にとってはナルさんもそう。そういう俺は、自分の人生を、「俺は俺」として生きていくんですけど、自分に、たくさんいいことを気づかせてくれた剣の演技というものを、何か形にできるのであればやっていきたいと思って、実際にやっているんです。

川本:うん。

島口:僕は、

形的にも美しく、武術的にも護身術になるような剣伎を広めたい。

いつか、ワールドワイドに僕がひらいた道場から、ハリウッドスターが生まれるかもしれない。そういう道場をやりながら、悠々自適に世界をまわり、おじいちゃんになっても、自分なりに、自分の世界で一番突きぬけていきたいと思います。

 (第4週に続く)

 

ゲスト・プロフィール 島口哲朗(しまぐちてつろう)  

日本大学芸術学部映画学科出身。歌舞伎などの舞台で経験を積んだ後、1998年「剱伎衆かむゐ」を創設、主宰を務める。自らの俳優活動(舞台・映画・イベント)の他、2003年「KILL BILL vol1」に出演・振付、地球ゴージャス「クラウディア」や「星の大地に降る涙」公演の振付を担当し、殺陣師としても活躍。日本舞踊七々扇流名取。最近はアメリカやヨーロッパなどの海外のメディアに特集されることも多い。日本文化を発信する【SAMURAI SWORD ARTIST】である。

ホスト・プロフィール 川本成(かわもと・なる)

欽ちゃん劇団1期生として在籍。1994年“あさりど”結成。主な出演番組としてTV『笑っていいとも!』9代目いいとも青年隊、『王様のブランチ』他、TV・ラジオ・舞台に多数出演。現在はTV『スタイルプラス』、ラジオ「絶滅寸前男子」へのレギュラー出演や、アニメ『テニスの王子様』、『遊戯王デュエルモンスターズGX』、『GON』(2012年4月~)他で声優として活躍の場を広げ、舞台では『小堺クンのおすましでSHOW』、『冒険者たち』他、また自ら『時速246億』を主宰し、定期的かつ精力的に舞台をプロデュースしている。 

 

★お知らせ★その1
「剱伎衆かむゐ」の今後の予定です。
11月15日(木)~12月12日(水)「かむゐヨーロッパツアー公演&サムライ道場」(ポーランド・イギリス・スペイン・イタリア)
1月8日(火)~13日(日)「花や…蝶や…」(築地ブディストホール)
2012年~かむゐリーダー島口哲朗によるオリジナルメソッド【剱伎道】を国内外で開講。
詳細は、剣伎衆かむゐHP http://www.k-kamui.com/・島口哲朗HP http://www.kamui-tetsuro.com

★お知らせ★その2
川本成さん出演舞台のお知らせです!
「スペーストラベラーズ side;Winter」
日程:2012年12月19日(水)~30日(日)
劇場:下北沢・本多劇場
原作:ジョビジバ大ピンチ
原作脚本:マギー
脚色・演出:細川徹(男子はだまってなさいよ!)
出演:和田琢磨・川本成・永山たかし・夙川アトム・顔田顔彦・大堀こういち
料金:前売・当日共¥4,500(全席指定・税込)
チケット:発売中
チケットぴあ http://pia.jp/t/sptrW/TEL0570-02-9999(Pコード:424-631)
ローソンチケットhttp://l-tike.com/sptrW/”TEL0570-084-003(Lコード33020)・TEL0570-000-407(演劇・クラシック用オペレーター) e+(イープラス)http://eplus.jp/sptrW/
お問合せ:ネルケプランニングTEL 03-3715-5624(平日11:00~18:00)http://www.nelke.co.jp/stage/supetora_winter/

★お知らせ★その3
川本成さん出演舞台のお知らせです!
劇団たいしゅう小説家×空飛ぶ猫☆魂「サヨナラ誘拐犯のパーフェクト・ストーリー」
日程:2013年2月20日(水)~24日(日)
劇場:萬劇場
脚本・演出:西永貴文
出演:太田基裕・山本涼介・長戸勝彦・岸潤一郎・西興一郎・佐々木光弘・小休暁・永田卓也・石井苗子・川本成
日替わりゲスト20日(水)湯澤幸一郎 21日(木)昼・夜 粟島瑞丸 22日(金)川尻恵太 23日(土)昼 竹本孝之 夜 水谷あつし 24日(日)未定
料金:¥4,500
チケット:2013年1月12日(土)~発売開始
ローソンチケット(Lコード:31842) TEL0570-084-003関東地区24時間受付(発売初日は10:00AMより受付)
演劇・クラシック専用予約TEL0570-000-407(10:00~20:00)
事務局先行予約:12月15日(土)10:00~劇団たいしゅう小説家ホームページより
http://www.h4.dion.ne.jp/~tai-setu/ お問合せ:劇団たいしゅう小説家 03-3710-2370(平日11:00~19:00)

 

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